2026年度が始まろうとしています。介護報酬改定の影響、慢性的な人手不足、そして物価上昇による経費の増大——経営者として、正直「今年も山場が続くな」と感じています。しかし、こうした逆境こそ、経営者としての真価が問われる場面でもあります。今回は、2026年度に介護事業経営者が向き合うべき3つの課題と、その乗り越え方を考えてみたいと思います。
壁①:介護報酬改定による収支への影響
2024年度の介護報酬改定は全体的にプラス改定となりましたが、加算要件の厳格化や書類作成の増加など、現場の負担が増した側面も少なくありません。加えて、新たに設けられた加算を「取れていない」事業所が多いのも現実です。
経営者として今すぐ取り組むべきことは、自事業所の加算取得状況の総点検です。「算定できるはずなのに取っていない加算」が意外と多いものです。処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算はもちろんのこと、各サービス種別に設けられた質の高いケアに関する加算についても、要件を満たしているか確認しましょう。
また、次期改定(2027年度)を見据えた準備も重要です。制度の方向性を早めにキャッチし、今からできる体制整備を進めることが、先手を打つ経営につながります。
壁②:人材不足と採用難
介護業界の人材不足は今に始まったことではありませんが、2026年度も状況は楽観できません。少子化の進行により求職者数は減り続け、他業種との競合も激しくなっています。
採用に苦しんでいる事業所の多くに共通するのは、「条件を並べるだけで、働く魅力を伝えきれていない」という点です。給与や休日だけでなく、「この職場で働くとどう成長できるか」「どんなチームで、どんな仕事をするのか」を具体的に発信することが採用力を高めます。
定着率の向上も急務です。採用コストを考えると、入職した人材が長く働き続けられる環境づくりへの投資は、経営的にも合理的な判断です。1on1面談の定期実施、キャリアパスの可視化、職場環境の改善——地道な取り組みの積み重ねが、じわじわと組織を強くします。
壁③:物価上昇と経費削減の両立
光熱費、食材費、消耗品費——あらゆる経費が上昇し、事業所の収支を圧迫しています。処遇改善として職員の給与を上げる必要がある一方で、経費も膨らむという板挟みの状況に、頭を抱えている経営者も多いでしょう。
経費削減には限界があります。むしろ重要なのは、「稼げる体制」を整えることです。稼働率の向上、加算の最大化、新たなサービス展開——売上を増やす視点を常に持ち続けることが、持続可能な経営の鍵です。
また、AIやICTの活用による業務効率化も、経費削減と生産性向上の両面で効果があります。記録業務の効率化、シフト管理の自動化、請求業務の省力化——導入コストはかかりますが、中長期的には人件費の圧縮や職員の負担軽減につながります。
「壁」を乗り越えるための経営視点
3つの壁を並べると、どれも深刻に見えます。しかし私がこれまでの経営経験の中で学んできたのは、「問題を全部一度に解こうとしない」ということです。
優先順位をつけ、今期に集中して取り組む課題を1〜2つに絞る。そして、それをやり切る。その積み重ねが、確実に組織を前進させます。完璧を目指すよりも、「今できることを着実に実行する」姿勢が、変化の激しい介護経営の現場では最も重要です。
経営者が元気でいることも、組織にとっての大切な資源です。仲間と情報を交換し、学び合い、時には愚痴をこぼせる場を持つことも、長く経営を続けるうえでの知恵だと思っています。
まとめ:2026年度の経営を乗り切るポイント
- 加算取得状況を総点検し、「取れていない加算」を洗い出す
- 採用では条件だけでなく「働く魅力」を具体的に発信する
- 定着率向上への投資を惜しまない(1on1・キャリアパス・環境改善)
- 経費削減より「稼げる体制づくり」を優先する
- AIやICT活用で業務効率化を進める
- 優先順位をつけて「今期やること」を絞り込み、やり切る
2026年度も決して楽な年ではないでしょう。しかし、こうした厳しい環境の中でも前を向いて経営を続けることが、地域の介護を守ることにつながると信じています。一緒に乗り越えていきましょう。
