9月は認知症月間 ― その人に最初に気づくのは、たぶん介護職ではない

9月は認知症月間 ― その人に最初に気づくのは、たぶん介護職ではない

8月24日、月曜日です。夕方の暗くなる時間が、ずいぶん早くなりました。7月には7時を過ぎても明るかったのに、今はもう6時半には薄暗い。北海道の秋は、こうやって足音もなくやってきます。

来週から9月です。9月は認知症月間、21日は世界アルツハイマーデーにあたります。各地でオレンジ色のライトアップや講演会が行われる月ですが、今日はもう少し手前の、地味な話を書きたいと思います。

最初に気づくのは、たいてい制服を着ていない人

道に迷っている高齢の方に最初に気づくのは、誰でしょうか。

ケアマネジャーでもなければ、私たち介護職でもありません。コンビニの店員さんです。郵便配達の方です。バスの運転手さんです。庭に出ていた隣の家の人です。

考えてみれば当たり前で、私たちが会えるのは、すでにサービスにつながっている方だけです。まだどこにもつながっていない人、あるいは家族が抱え込んでいて外に出てこない人には、専門職はまず会えません。その方の異変に最初に触れるのは、いつもまちの誰かです。

だから、認知症について地域で考えるということは、専門職の技術を磨く話であると同時に、専門職ではない人が「あれ」と思ったときにどうするか、という話でもあります。

「あれ」で終わってしまう理由

厄介なのは、気づいた人の多くが、そこで止まってしまうことです。

止まる理由は、無関心ではありません。むしろ逆で、良識のある人ほど止まります。

「知らない人に声をかけて、変に思われないか」
「大げさにして、迷惑にならないか」
「そもそも、どこに言えばいいのか」

この3つ目が、いちばん現実的な壁だと思っています。警察に電話するほどのことなのか判断がつかない。かといって、市役所の何課に言えばいいのかも分からない。結果、家に帰ってから家族に「今日ね、ちょっと気になる人がいてね」と話して終わる。

私自身、以前まちなかで、季節に合わない厚着で同じ場所を行ったり来たりしている方を見かけたことがあります。声はかけました。かけましたが、そのあと自分が何をすべきなのか、その場で少し迷いました。この仕事をしている人間でも迷うのです。まちの方が迷わないはずがありません。

答えは、たいてい2つで足りる

伝えるべきことは、そんなに多くありません。私はいつも2つに絞って話しています。

ひとつ、明らかに危ない状況(車道に出そう、真冬に薄着、けががある)なら、迷わず110番か119番。ためらう必要はありません。

ふたつ、そこまでではないけれど気になる、という段階なら、地域包括支援センターに電話する。名前も住所も分からなくて構いません。「この時間に、この辺りで、こういう様子の方がいました」で十分です。

千歳市を含め、多くの市町村には高齢者の見守りやSOSネットワークの仕組みがあって、行方不明の届出が出ていれば照合ができます。届出が出ていない段階でも、その情報は必ず意味を持ちます。同じ方が何度か話題に上がることで、初めて支援が動き出すことがあるからです。

自分の住むまちの地域包括支援センターの電話番号を、家族の連絡先の隣に入れておく。それだけで、「あれ」が「あれ」で終わらなくなります。

声のかけ方は、たった3つ覚えておけばいい

これは認知症サポーター養成講座でも必ず伝えていることですが、書いておきます。

後ろから急に肩に触れないこと。驚かせると、その後の会話が成り立たなくなります。正面から、少し離れた位置で、視線の高さを合わせること。そして、ゆっくり、短い言葉で聞くこと。

「どちらまで行かれますか」でいいのです。相手を試すような質問は要りません。今日が何日かとか、ここがどこかとか、そういうことを聞く必要はまったくありません。

うまくできなくても大丈夫です。声をかけた時点で、その方はもう1人ではなくなっています。

事業所として、9月に1つだけやるなら

私たち事業所の側は、この月をどう使うか。

講演会を開くのも、ライトアップに協力するのも意味のあることです。ただ、もっと小さくて効くことがあると思っています。

近所の商店やコンビニ、金融機関、郵便局に、認知症サポーター養成講座を持って行くことです。90分が難しければ、朝礼の15分でも構いません。うちの職員が出向いて、さっきの2つと3つを話して帰ってくる。それだけです。

以前、金融機関の窓口の方から「同じ日に3回、通帳の再発行に来られた方がいて、どう対応すればよかったのか」と聞かれたことがあります。あの質問を受けたとき、私たちの側が説明を届けられていなかったのだと痛感しました。専門職は自分たちの言葉で話しすぎていて、まちの人が本当に困っている場面を、あまり知らないのだと思います。

9月に1件でも、そういう場をつくれたらいい。認知症月間というのは、そのための口実として、ちょうどよくできています。

自分の親のこととして

きれいごとを書いているようですが、私にとってこれは他人事ではありません。

いつか自分の親が、あるいは自分自身が、夕方のまちで少し困った顔をして立っている日が来るかもしれない。そのとき、通りかかった誰かが立ち止まってくれるかどうかは、今このまちに、どれだけの人が「声をかけていい」と思えているかで決まります。

制度でも、予算でも、計画書でもなく、そこだと思っています。

日が短くなります。暗くなるのが早い季節は、迷う人にとっていちばんつらい季節です。この9月に、まちの中の「気づける人」を1人でも増やせたらと思っています。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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