もう一度、介護に戻ろうかと思っている人へ ― ブランクは、思っているほど重くない

もう一度、介護に戻ろうかと思っている人へ ― ブランクは、思っているほど重くない

8月23日、日曜日です。朝晩の風が少し冷たくなってきて、北海道の夏が終わりに近づいているのを感じます。

先週この場で、盆明けに「辞めようかな」という気持ちが動き出すという話を書きました。今日は、その反対側の話を書きたいと思います。

介護の資格を持ちながら、今は現場を離れている人。結婚や出産、家族の介護、体調、あるいは職場との相性。理由はさまざまですが、そういう方が全国にかなりの数いることは、統計を見なくても実感としてわかります。私の周りにもいます。

そして、そういう方から、この時期に相談を受けることがあります。「もう一度、戻ろうかと思っているんですけど」という相談です。

迷う理由は、たいてい技術のことではない

キャリアコンサルタントとして面談で話を聞いていて気づいたことがあります。

戻ることを迷う人が口にする不安は、介助の技術そのものではないのです。「浦島太郎になるのが怖い」。言い方は違っても、だいたいこれに集約されます。

「記録がタブレットになったと聞きました」
「制度がずいぶん変わったんですよね」
「若い人ばかりの中に、私みたいなのが入っていっていいんでしょうか」

3年、5年と離れていると、現場がすっかり別のものになっている気がしてくる。自分だけが取り残されているように思えてくる。その感覚は、よくわかります。

けれど、実際に戻ってきた人を何人か見てきて言えるのは、そこはあまり心配しなくていい、ということです。

変わったことは、事業所が教えるべきことばかり

確かに、この数年で変わったことはあります。

記録や情報共有のICT化は進みました。虐待防止と身体拘束適正化の研修や委員会は義務になりました。感染症と自然災害のBCPも、策定して訓練するところまでが求められています。ハラスメント対策も同じです。

並べると多いように見えます。ただ、よく見てください。これは全部、事業所が職員に教える側の話です。新しく入った人が自力で覚えてから来るべきものではありません。むしろ、新人にきちんと説明できない事業所のほうが問題です。

タブレットの操作も同じです。あれは慣れの問題で、能力の問題ではない。実際、うちの職員でも、最初は「機械は苦手で」と言っていた50代の方が、半年後には誰よりも手際よく入力しています。

そして、変わっていないことのほうが、実はずっと多い。

その人が今日どんな気分でいるか、顔色を見て察すること。声のかけ方。手を添える強さ。食事の途中で「もういい」と言われたときに、どう間を取るか。この仕事の芯にあるものは、5年やそこらでは変わりません。

一度身についたそれは、思っているほど簡単には抜けないものです。

戻り方の選択肢は、以前より増えた

もうひとつ、以前と変わったのは、戻り方の幅です。

昔は「フルタイムか、辞めるか」に近い選択でした。今は、週2日から始める、夜勤なしで働く、短時間で入る、といった形が現実的な選択肢になっています。人手が足りない状況が、皮肉なことに働き方の幅を広げました。

最近は、1日単位で働けるスポットワークの仕組みを使って、まず一度現場に入ってみるという入り方もあります。これについては私自身、9月に札幌で話す機会をいただいていて、いま資料をまとめているところです。合う合わないを確かめてから決められるのは、戻る側にとって悪い話ではないと思っています。

それから、資格を持っていて今は働いていない方は、都道府県の福祉人材センターに届け出ておくと、研修や求人の情報が届く仕組みがあります。今すぐ戻る決心がつかなくても、情報だけ受け取っておくことはできます。北海道であれば、北海道福祉人材センターが窓口です。

見学だけしてみる、というのも立派な一歩です。うちにも「まだ働くとは決めていないんですが」と言って見に来られる方がいます。それで構わないと思っています。

受け入れる側に、言っておきたいこと

ここからは、事業所を預かる立場の方に向けてです。

ブランクのある有資格者を採用したとき、「経験者だから大丈夫」と思って、いきなり通常の配置に入れてしまうことがあります。これは、いちばんやってはいけないことだと思っています。

本人は資格も経験もあるぶん、「できなければ恥ずかしい」と思っています。だから、わからないことを聞けない。聞けないまま数週間が過ぎて、静かに辞めていく。この形の離職を、私は何度か見てきました。

未経験者には丁寧に教えるのに、経験者には「まあ大丈夫でしょう」で済ませてしまう。その差が、結果的に一番もったいない結果を招きます。

即戦力という言葉は、使わないほうがいいと思っています。あれは受け入れる側の期待であって、本人の状態を表す言葉ではありません。

迷っていること自体が

戻ってきた人が、しばらく経ってから「やっぱりこの仕事、好きだったんですね」と言うことがあります。その言葉を聞くのが、私はとても好きです。

離れてみて初めてわかることが、この仕事にはあります。給料でも労働時間でもないところに、自分を引き戻す何かがあった。それを本人が確かめられた瞬間だと思うからです。

もし今、戻ろうかどうか迷っている方がいるなら、その迷いは軽く見ないでいいものだと思います。どうでもいい仕事なら、そもそも迷いません。何年も経ってまだ考えているということは、それだけ大事に思っている証拠です。

ブランクは、思っているほど重くありません。少なくとも、あなたが持っているものより重くはない。

夏が終わります。9月は、動き出すにはちょうどいい季節です。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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