介護保険証がマイナカードになる日 ― 2028年春に向けて、地域が先に揃えておくこと

介護保険証がマイナカードになる日 ― 2028年春に向けて、地域が先に揃えておくこと

8月19日、水曜日です。盆明けの慌ただしさもようやく落ち着いてきました。

一昨日、読売新聞オンラインに、介護保険証とマイナンバーカードの一体化についての記事が出ていました。マイナカードだけで介護保険の資格確認ができる仕組みを、2027年3月末までに408の自治体で導入し、2028年4月までには全国のおよそ9割の自治体で使えるようにする、という内容です。

3日前にも介護情報基盤の話を書いたばかりなので、また同じ話かと思われるかもしれません。ただ、あちらは「情報がつながると何ができるか」という話でした。今回は違います。窓口で毎日やっている、あの1枚の紙の扱いが変わるという、もっと手前の話です。

数字を、自分の地域に置き直してみる

408自治体という数字を見たとき、私がまず思ったのは「千歳はどうなのだろう」ということでした。

全国の市町村はおよそ1,700です。そのうち408ということは、来年3月の時点ではまだ4分の1ほど。9割に届くのは、そこからさらに1年後です。つまり、この2年間は「もう始まっている地域」と「まだの地域」が地続きに並ぶ期間になります。

これは地方にいる者にとって、意外と大きな話です。私たちの利用者は千歳市の方が中心ですが、恵庭や苫小牧の事業所と情報をやりとりする場面はありますし、入院先が札幌ということも珍しくありません。自治体ごとに運用の足並みが揃わない期間は、そのつなぎ目に確認の手間が乗ります。制度が新しくなるとき、現場が疲れるのはたいてい、新しい仕組みそのものではなく、新旧が混在している最中なのです。

現場にいちばん効くのは、資格確認ではないと思う

記事には利用者側のメリットとして、カードの提示だけで資格確認が済むこと、マイナポータルで自分の介護情報を見られることが挙げられていました。

正直に申し上げると、資格確認そのものは、私はそこまで大きな変化だとは思っていません。介護保険証は医療保険証と違って、毎回窓口で出すものではないからです。契約のときに確認して写しをとる、更新のときにまた確認する。頻度としてはそのくらいです。

私が「これは効く」と思ったのは、別のところです。主治医意見書をオンラインで提出できるようになる、という1行のほうです。

要介護認定の申請から結果が出るまで、原則は30日とされていますが、実際にその期間で収まることはあまりありません。理由の多くは意見書です。医療機関に依頼書が届き、先生が書き、返送され、それが認定審査会にかかる。この郵送と手作業の往復で、2週間、3週間と積み上がっていきます。

その間、私たちは暫定のケアプランでサービスを始めます。結果が出て想定と違う区分だったときには、組み直しになる。ご家族には「まだ結果が出ていません」と何度も説明する。この待ち時間は、事業所の手間である以上に、ご本人とご家族が宙ぶらりんのまま過ごす時間です。

ここが2週間でも短くなるのなら、それは資格確認の簡便化よりずっと大きい。認定が早く出るということは、必要な支援が早く始まるということだからです。

医療側が揃わないと、効果は出ない

ただし、この主治医意見書のオンライン化には条件があります。医療機関側が対応していなければ、意味がありません。

介護側だけが電子化しても、意見書を書くのは医師です。地域の診療所には、規模も体制もさまざまな事情があります。大きな病院なら院内の医療情報部門が動くでしょうが、医師が1人、事務の方が1人か2人という診療所では、新しい仕組みに乗る余力がどれだけあるか。ここは正直、地域差が出るところだと思っています。

だからこそ、これは介護の側から「お願いします」と言って進む話ではなく、地域として揃える話だと考えています。医師会、市の担当課、居宅介護支援事業所。この3者が同じ時期に同じ絵を見ていないと、制度だけが先に走ります。

私が理事長を務めているNPOは、まさにこの介護と医療のあいだをつなぐためにある法人です。であれば、2028年4月という期限が示されたいま、そこから逆算して、いつ誰と話しておくべきかを考えるのが自分の仕事だろうと思っています。実務が始まってから「聞いていない」と言い合う場面を、これまで何度も見てきました。今回はそうしたくありません。

二重運用を、面倒だと言わない

記事のなかで、私がいちばん安心したのは最後の一文でした。マイナカードをお持ちでない方のために、これまでどおりの介護保険証の交付も続ける、という部分です。

これは、現場としてはありがたい配慮です。同時に、私たちが2種類の運用を長く抱えることも意味します。カードで確認する方と、紙で確認する方が同じ事業所に混在する。効率だけを見れば、面倒には違いありません。

それでも、面倒だと言うべきではないと思っています。90歳の方に「カードを作ってください」と事業所が迫るのは、筋が違います。紙のままでも困らない仕組みを国が残してくれるのなら、私たちはその両方を淡々と回すだけのことです。

そのうえで、備えるべきことが一つあります。ご家族から「マイナカードにしたほうがいいのか」と聞かれる場面が、確実に増えるということです。窓口の職員が答えに詰まったり、人によって違う説明をしたりすると、それだけで不信につながります。制度が動き出す前に、事業所として何と答えるかを一度そろえておく。難しい説明はいりません。「今はどちらでも大丈夫です。将来はカードで確認できるようになります」。それだけ言えれば十分です。

2年は、思っているより短い

2028年4月と聞くと、まだ先の話に感じます。ですが、その頃には報酬改定の議論も動いていますし、うちの法人にも別の予定がいくつも入ってきます。準備の時間として2年は、けっして長くありません。

こういう制度の話を、私はできるだけ早い段階で書くようにしています。始まってから慌てて解説するより、2年前に一度目を通しておいてもらうほうが、現場の役に立つと思うからです。

今日のところは、これだけ頭の隅に置いていただければ十分だと思います。介護保険証は、いずれマイナカードに寄っていく。でも紙もなくならない。そして、いちばん現場が助かるのは、認定が早く出るようになることのほうだ、と。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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