盆が明けて、最初の月曜日です。連休明けの朝はどこの事業所も少しばたつくものですが、今週からまた日常が戻ってきます。
今日は、少し宣伝めいた話になることをお許しください。株式会社MCLでは、スタッフがそれぞれにブログを書いています(MCLブログ)。デイサービスの制作活動やお習字の様子、お誕生日カードづくりといった現場の話もあれば、久しぶりに観た映画の話、そして「あらゆる害獣対策を張り巡らせた結果、鹿の知能レベルが上がった話」まで。業務のことでも、プライベートなことでも、何を書いてもかまわないことにしています。
「安心」は、情報の量からは生まれない
なぜこんなことをしているのか。理由ははっきりしていて、入居者やご家族、関係する皆さまに、うちのスタッフがどういう人間なのかを知っていただきたいからです。
大切なご家族を託すとき、人が本当に知りたいのは、パンフレットに載っている職員配置基準でも、重要事項説明書の数字でもありません。「毎日、母のそばにいてくれるのは、どんな人なのだろう」。それが分かるかどうかで、安心の度合いはまるで違ってきます。
けれど、この情報がいちばん手に入りにくい。施設見学は一時間ほど、契約の場でお会いするのは相談員だけ。実際にケアにあたる職員と、ご家族がゆっくり話す機会は、思っているほど多くないのが現実です。面会に来られても、職員は業務の合間ですから、どうしても報告と確認が中心になります。
だから、ブログなのです。害獣に手を焼いている職員がいる。休みの日に映画を観る職員がいる。てるてる坊主会議なるものを大真面目に開いている部署がある。そういうことが伝わったとき、その職員は「担当の方」から「あの、鹿の人」に変わります。この変化は、小さいようで、決して小さくありません。
一言目が変わる
実際にありがたいのは、面会に来られたご家族との会話の入り口が変わることです。
「ブログ、読みましたよ」から始まると、そのあとの話がずいぶん柔らかくなります。逆に、こちらから聞き出そうとしなくても、ご家族のほうから暮らしぶりや昔の話をしてくださることがある。介護の現場では、ご本人の生活歴や好みをどれだけ知っているかがケアの質を左右しますが、その情報は、たいてい構えた面談ではなく、こういう緩んだ会話の中から出てきます。
苦情やご意見をいただく場面でも、同じことを感じます。相手がどんな人か分かっている関係と、分かっていない関係とでは、同じ内容の話でも、行き着く先が変わる。人柄が先に伝わっているというのは、そういう保険のような働きもするのだと思います。
書く側にも、返ってくるもの
もう一つ、これは始めてから気づいたことですが、書く側にも効いています。
自分の仕事を人に読んでもらう文章にするには、いったん立ち止まって、今週何をしたか、何が嬉しかったかを振り返らなければなりません。この作業が、実はささやかなキャリアの棚卸しになっています。日々の業務は流れていってしまうものですが、書き留めた分だけは残る。一年分たまったとき、それは自分の仕事の記録になります。
それに、ふだん口数の少ない職員が、文章では驚くほど面白いことを書く、ということが起こります。私はそういう発見を、経営者としてかなり楽しみにしています。人の得意なところは、必ずしも会議の場に出てくるとは限らないのだと、あらためて思わされます。
続けるために、決めていないこと
うまくいっている理由があるとすれば、それは「決めていないこと」が多いからだと思っています。
上手に書く必要はありません。良い話でなくてもかまいません。愚痴でなければ、失敗談でも困りごとでも構わない。何より、ノルマにしないこと。書かされている文章は、読めばすぐに分かってしまいますし、そこから人柄は伝わりません。
その代わり、守るべき一線ははっきりさせています。利用者のお名前や、ご本人が特定される情報は載せない。写真は必ず同意をいただいてから。ここだけは、書き手の判断に委ねずに、組織として線を引いておく必要があります。この一線さえ守れていれば、あとは自由でいいというのが、私の考えです。
介護の情報公表制度では分からないこと
介護サービス情報公表制度で、事業所の情報は誰でも調べられるようになりました。職員数も、資格保有者の割合も、加算の算定状況も分かります。それは大事な仕組みです。
でも、そこには絶対に載らないものがあります。この施設で働いている人たちが、どんな顔をして毎日を過ごしているのか。それを伝える手段は、結局のところ、自分たちで持つしかありません。
地域に開かれた事業所という言葉をよく使いますが、開くというのは、見学を受け入れることや、行事に地域の方を招くことだけを指すのではないと思っています。中にいる人間が見えている状態のことを、そう呼ぶのではないでしょうか。
今日も、どこかの部署から新しい記事が上がってくるはずです。私はそれを、けっこうな楽しみにして月曜日を始めています。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


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