今日は8月13日、お盆の入りです。ただ、介護に携わっていると、この数日にほんの少し身構える自分がいるのも、正直なところです。
世間が休みに入るということは、いつもなら頼れる先が、しばらく閉まるということでもあるからです。
休みが重なる、静かな数日
お盆の期間、かかりつけの診療所が休診に入ります。近所の薬局も閉まる日がある。デイサービスも、事業所によっては数日お休みをいただく。ひとつひとつは当たり前のことですが、それが在宅で暮らす高齢者のまわりで重なると、思いのほか細い綱の上を歩くような数日になります。
いつもの薬がちょうど切れる。夜中に少し様子がおかしくても、いつもの先生はお盆で不在。しかも、支えになるはずの家族が、この時期に限って帰省や旅行で家を空けている――そんな条件が、独居のお宅で静かに揃ってしまうことがある。大きな事故になるかどうかは、本当に紙一重なのだと、毎年この時期に思い知らされます。
「顔の見える関係」が効くのは、こういう時
こういう谷を越えるのに、派手な仕組みは要りません。効くのは、いつも申し上げている「顔の見える関係」です。
どの医療機関がいつ休むのか、休みの間の連絡先はどこか。急変したときに、まずどこへつなぐのか。それを、お盆に入る前に関係者どうしで一枚にまとめて共有しておく。たったそれだけで、いざという時の迷いがずいぶん減ります。連携というのは、非常時に慌てて作るものではなく、平時のうちに作っておいて、非常時に静かに使うものなのだと、私はずっと思っています。
正直に言えば、私自身、若いころは「その時になれば何とかなる」と高をくくっていました。けれど、何とかならなかった場面をいくつも見てきて、考えが変わりました。備えの一枚があるかないかで、現場の職員が背負う不安の重さがまるで違うのです。
小さな事業所ほど、ひとりで抱えない
先週この場で、小さな事業所ほど地域の中で薄くなりやすい、という話を書きました。お盆のような時期こそ、その差がはっきり出ます。休みの谷を単独で抱え込むと、たった一件の急変で現場が立ちゆかなくなる。
だからこそ、地域包括支援センターや近隣の事業所と、休業日や当番の情報を持ち寄っておく。「うちが休む日は、そちらに一本入れてよいですか」と、事前に声をかけておく。私たちが連携の会という形で地道に続けてきたのは、突き詰めればこの一言を言い合える関係をつくることでした。困ったときに遠慮なく電話できる相手が地域に何人いるか。それが、まちの介護力の正体だと感じています。
数日を無事に越えるということ
大きな災害の備えばかりが語られますが、お盆の数日を誰も欠かさず無事に越える――この地味な達成の積み重ねこそが、地域で暮らしを支えるということの中身なのだと思います。
今日から数日、街が静まる間も、在宅のお宅を気にかけ、当番に立ってくださる専門職の方々がいます。その一人ひとりに、心から敬意を表します。私も、休みの谷に誰かを落とさないための連携を、来年に向けてまた一段ていねいに組み直していきます。お盆の静けさの中で、それでも誰かの暮らしが今日も静かに続いていることに、感謝しています。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


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