お盆の帰省が運んでくる、家族の「気づき」 ― 盆明けの相談増に、事業所はどう備えるか

お盆の帰省が、離れて暮らす家族の「気づき」を運んでくる ― 盆明けの相談増に、事業所はどう備えるか

八月に入り、お盆が近づいてきました。毎年この時期になると、私は少しだけ身構えます。お盆が明けると、決まって相談の電話が増えるからです。

「久しぶりに実家に帰ったら、母がずいぶん痩せていて」「冷蔵庫に同じものがいくつも入っていた」「話が噛み合わないことが増えた気がする」。遠方で暮らす息子さん、娘さんからの、少し戸惑ったような声。電話の向こうで、言葉を選びながら話されます。その多くが、お盆に久しぶりに親元へ帰って、はじめて変化に気づいた家族からのものです。今日は、その季節の話を少し書かせてください。

帰省は、地域にとって年に一度の「見守りの目」

普段、離れて暮らす家族は、電話やビデオ通話で「元気だよ」という声を聞いて安心しています。けれど、声だけでは分からないことがあります。体重の減り方、家の中の様子、季節に合わない服装、閉じられたままのカーテン。実際にその場に立って、はじめて見えてくるものです。

お盆は、その「見えなかったもの」が一気に表に出てくる、年に一度の機会でもあります。言い換えれば、帰省してくる家族は、地域にとって数えるほどしかない、貴重な見守りの目なのだと思います。私たちが日々続けている地域の見守り体制が「面」だとすれば、盆の帰省は、普段は届かない世帯に差し込む「点」のようなものです。

その点の光が、盆明けに一斉に相談窓口へと向かってきます。

気づいた家族の不安を、たらい回しにしない

大切なのは、そこからです。

不安を抱えて相談してくださった家族が、どこへ連絡していいか分からず、あちこちに電話をかけ、そのたびに「うちではちょっと」と言われてしまう。そんな経験をさせてしまうと、せっかく芽生えた「何とかしなければ」という気持ちが、疲れとあきらめに変わってしまいます。私は、これが一番もったいないと思っています。

だからこそ、盆明けの相談増を「季節の風物詩」で終わらせず、仕組みとして備えておきたいのです。具体的には、次のような点を、今のうちに事業所内と連携先で確認しておくことをおすすめします。

連携とは、相談の「入口」をひとつにすること

私が理事長を務める連携の会でも、こうした季節の相談の波を、事業所だけで抱えるのではなく、地域全体で受け止められないかと考えてきました。ケアマネジャー、地域包括、医療機関、そして私たちのような介護事業所。それぞれが別々の入口を持っていると、相談する側は「どこに言えばいいのか」で消耗してしまいます。

連携というのは、何か難しいことをするわけではないのだと思います。相談してこられた家族に、「そのお話でしたら、あちらのセンターが詳しいので、私から一報入れておきますね」と言える関係が、日頃からできているかどうか。それだけのことのようにも思います。けれど、この「一報入れておきますね」が言える地域と、言えない地域とでは、家族が感じる安心感がまるで違います。

今年のお盆に向けて

お盆は、家族が親と向き合う時間であると同時に、私たち専門職にとっては、地域の隠れたSOSが届く季節でもあります。帰省した家族が抱えて帰ってくる小さな違和感を、丁寧に受け止め、正しい入口へとつなぐ。その準備を、相談が来てからではなく、来る前の今、静かに整えておきたいと思っています。

盆明けの電話が鳴ったとき、「よく気づかれましたね。ここから一緒に考えていきましょう」と、落ち着いて言える自分たちでありたい。そう思いながら、今年もこの季節を迎えています。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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