経営者が倒れたら、誰が現場を守るのか ― 猛暑の週末に考える「休む力」

経営者が倒れたら、誰が現場を守るのか ― 猛暑の週末に考える「休む力」

七月も終わりに近づき、暑さが本格的になってきました。北海道でも、以前とは比べものにならないほど気温が上がる日が増えています。

現場では、職員に「無理をするな」「こまめに休め」と口を酸っぱくして言っています。ところが、それを言っている当の経営者や管理者が、いちばん休んでいない。今日はその、少し耳の痛い話を、自分への戒めも込めて書きます。

「経営者は休まないもの」という思い込み

この仕事をしていると、休むことに、どこか後ろめたさを感じてしまいます。

現場が動いている。職員が汗をかいている。事務仕事は終わらない。処遇改善加算の実績報告に、賃金の調査に、月末の作業が重なる七月です。そんな中で自分だけ休むなど、という気持ちが、正直、拭えません。

けれど、この夏、あらためて思うのです。経営者が体調を崩して倒れたら、そのとき現場は誰が守るのかと。日々の介護は職員が回してくれます。でも、資金繰りの判断、行政とのやり取り、いざというときの最終責任。そこは代わりがききません。だからこそ、経営者が倒れることは、経営上の最大のリスクのひとつなのだと思います。

疲れた頭で下す判断は、たいてい鈍い

もうひとつ、休養を「経営判断の質」の問題として捉えるようになりました。

疲れきった頭で下す判断は、たいてい鈍っています。目先のことしか見えなくなり、視野が狭くなる。人にきつく当たってしまう。あとで振り返って「なぜあのとき、あんな決め方をしたのか」と悔やむ判断は、決まって自分に余裕がなかったときのものでした。

経営者の仕事の多くは、手を動かすことよりも、考え、決めることです。だとすれば、頭を休ませて判断の質を保つことは、サボりではなく、仕事の一部なのだと思います。この歳になって、ようやくそう思えるようになりました。

「休める組織」かどうかは、経営者に表れる

経営者が一日も休めない組織は、裏を返せば、その人がいないと回らない組織だということです。

それは強さのようでいて、実はもろさです。属人化した組織は、その人が抜けた瞬間に立ち行かなくなる。私自身、自分がいなくても現場が回る仕組みを、どれだけ作れているか。休もうとすると、そこがはっきり見えてきます。休めないという事実そのものが、組織の課題を教えてくれる。

そして、経営者が休まない職場では、職員も休みを言い出しにくい。「休む力」を現場に根づかせたいなら、まず上に立つ者が、休んでみせる必要があるのだと思います。言葉より、背中のほうが、よほど伝わります。

この週末、少しだけ

とはいえ、急に長い休みを取れるわけではありません。私も、この夏に何日も現場を離れる、というわけにはいかない立場です。

だから、大げさに構えず、まずはこの週末に、少しだけ意識してみようと思っています。半日、仕事の連絡から離れる。エアコンの効いた部屋で、本の一冊でも開く。あるいは、ただぼんやりする。それだけでも、月曜の頭の働きは、きっと違ってきます。

猛暑の夏は、まだ続きます。職員に「休め」と言う前に、まず自分が休んでみる。判断の質を守り、いざというときに踏ん張れる自分でいるために。それも、経営者の大事な仕事のひとつだと思っています。

どうか、この記事を読んでくださっている経営者・管理者の方も、この週末、少しだけご自身を休ませてあげてください。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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