7月末が期限の作業がいくつか重なっています。処遇改善加算の実績報告もそうですが、もうひとつ、今年うちの事業所に回ってきたのが賃金構造基本統計調査です。厚生労働省の基幹統計調査で、事業所は無作為に抽出されます。断れる性質のものではありません。
昨日、6月分の給与データが出そろったので、記入対象者を19名に確定させました。ここまで来るのに、思っていた倍の時間がかかっています。
何がややこしいのか
調査票そのものは、項目を見れば意味の分かるものです。実労働日数、所定内実労働時間数、超過実労働時間数、きまって支給する現金給与額、超過労働給与額、そして前年の賞与額。
つまずくのは、どの月の数字を書くのかというところでした。
うちは翌月払いです。6月に働いた分は7月に支払われる。調査が求めているのは6月分の労働と、それに対応する給与です。給与ソフトから「7月支給」で出力すると、労働日数は6月のもの、支給日は7月のものが混ざったまま出てきます。ここを取り違えると、労働時間と賃金額の対応がずれた表ができあがる。ずれていても表としては完成してしまうところが、いちばん怖いと感じました。
対象者の確定にも神経を使いました。6月中の入退社をひとりずつ確認して、含める人・含めない人を線引きしていく。名簿を眺めながら、この人は6月10日入職だから対象外、この人は6月末退職だから対象、と一件ずつ潰していきました。19名という数字は、その積み重ねの結果です。
正直、面倒だと思っていました
こういう調査が回ってきたとき、最初に浮かぶのは「またか」という気持ちです。日々の業務があり、加算の実績報告があり、そこに国の統計が乗ってくる。誰が読むのか分からない書類のために半日を使うのか、と思ってしまう。
ただ、数字を並べているうちに、少し見え方が変わってきました。
いま、最低賃金の答申が出る時期です。介護報酬の議論も、賃上げの議論も、必ず「介護分野の平均賃金は全産業平均より月◯万円低い」という数字から始まります。あの数字は、天から降ってくるものではありません。どこかの事業所が、こうやって一人ずつ確認して書いた表が積み上がったものです。
そう考えると、いま自分が並べている19人分の数字も、そのごく一部としてどこかに混ざっていくことになります。うちの職員の給与が、統計上の「介護職員の賃金」の一粒になる。
数字を出す側にいるということ
介護の賃金が低いと、私たちはよく言います。私自身、この場でも何度も書いてきました。
ただ、その主張が届くかどうかは、根拠として持ち出せる数字があるかどうかにかかっています。感覚で「うちは苦しい」と言っても、制度は動きません。動かすのは統計です。そして統計は、調査に協力した事業所の数字でできています。
だとすれば、この作業は業界の外に向けて説明するための材料を、自分の手で作っているということになります。面倒であることは変わらないのですが、意味のない作業ではなかった、と思い直しました。
もっとも、そう思えたのは数字がだいたい出そろってからで、月ズレの確認をしていた最中はそんな殊勝なことは考えていませんでした。そこは正直に書いておきます。
事務作業の質を落とさないために
もうひとつ考えたのは、この手の作業をどう仕組みにするか、ということです。
今回は、給与データから調査票の項目へ転記する部分をかなり機械的に処理しました。手で写していたら、たぶんどこかで間違えていたと思います。人の目でやるべきなのは、対象者を含めるか外すかの判断と、出てきた数字が現場の実感と合っているかの確認の二つで、転記そのものではありません。
数字が出たとき、「この人がこの額なのはおかしくないか」と引っかかる感覚は、事業所を見ている人間にしか働きません。そこにこそ時間を使うべきで、そのために転記の手間は削っておきたい。当たり前のようですが、期限に追われるとつい逆になります。
期限は7月31日
残りは、オンラインでの入力です。データはそろったので、あとは提出まで持っていくだけになりました。
処遇改善加算の実績報告と時期が重なっているので、事務担当には負荷のかかる7月末です。こういうときこそ、経営側が「あれはどうなっている」と聞くだけの存在にならないよう気をつけたいと思っています。数字を並べる作業は、意外と、事業所のことがよく見える時間でもありました。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


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