実習生が来る夏 ― 受け入れる側が用意しておきたい三つのこと

実習生が来る夏 ― 受け入れる側が用意しておきたい三つのこと

夏になると、事業所に実習生がやってきます。養成校の学生、初任者研修の受講生、高校の職場体験。年齢も目的もばらばらですが、共通しているのはまだ介護の世界の外側にいる人が、内側を初めて覗くということです。

私は学校で教える側にも立っていますが、実際に学生と顔を合わせるのは冬の授業期間が中心です。ですから夏のこの時期は、もっぱら受け入れる側として実習生を見ています。今日は、その立場から書きます。

実習の成否は、来る前にほとんど決まっている

何年か受け入れをしてきて、はっきり感じることがあります。実習がうまくいくかどうかは、学生の資質よりも、受け入れ側の準備で決まるということです。

いい実習になった年を思い返すと、共通しているのは、初日の朝に現場が「誰が来るか」を知っていたことでした。逆に噛み合わなかった年は、たいてい当日の朝礼で「今日から実習生が入ります」と初めて共有されている。現場の職員には何の落ち度もありません。知らされていなかっただけです。

そして学生の側は、その空気を敏感に読みます。歓迎されていないのではなく、想定されていなかったということが、彼ら彼女らにはうまく区別できない。「自分は邪魔なのかもしれない」と受け取ってしまう。この誤解が、その後の一週間を決めてしまいます。

ひとつ、「担当」を決めておく

まずやっておきたいのは、実習生一人に対してその日の担当職員を決めておくことです。全員で見る、は誰も見ないと同じになります。

担当と言っても、ずっと張り付く必要はありません。「困ったらこの人に聞けばいい」という一人がいるだけで、学生の不安はかなり減ります。逆にこれがないと、学生は誰に聞いていいか分からないまま、廊下で立ち尽くすことになる。あの時間ほど、実習生にとってつらいものはありません。

シフト表に実習生の名前と担当者を書き込む。それだけでも十分に機能します。

ふたつ、「見せる場面」を選んでおく

実習で何を見せるか。ここは意識して選んだほうがいいと思っています。

介護の仕事は、外から見て地味な時間が長い。記録を書く、見守る、声をかける。学生が「思っていたのと違う」と感じるのは、多くの場合この地味さに触れたときです。それ自体は悪いことではありません。現実を知ってもらうのは大事なことです。

ただ、それだけで終わらせないでほしいとも思うのです。たとえば、なかなか食事が進まなかった方が、職員の一言で少し口をつけた場面。歩けないと思われていた方が、支えがあれば数歩進んだ場面。そういう瞬間は毎日どこかで起きています。起きているのに、忙しさの中で流れていく。

実習生がいる週は、その瞬間を意識して拾って、あとで言葉にして渡す。「さっきのあれ、ああいうのがこの仕事の面白いところなんだよ」と。たった一言ですが、学生の中に残るのは、たいていそういう一言のほうです。

みっつ、「否定しない場」を用意しておく

三つめが、いちばん大事だと思っています。実習の終わりに、質問と感想を出せる時間を取ることです。5分でも10分でも構いません。

このときに気をつけているのは、学生の言うことを最初から否定しないことです。「それは違う」「現場では無理」と返してしまうと、次の日から何も出てこなくなります。学生が持ってくる疑問は、たしかに理想論だったり、教科書どおりだったりします。けれどその素朴さは、私たちが現場で薄れさせてしまったものでもあるのです。

以前、実習生に「どうしてこの方には毎回同じ声のかけ方なんですか」と聞かれたことがあります。答えに詰まりました。理由はあったはずなのに、いつのまにか「そういうもの」になっていた。あの質問には、正直こたえました。同時に、ありがたくもありました。

実習生は、教える相手であると同時に、現場の目を洗う相手でもあります。そう思って迎えると、受け入れの負担感が少し軽くなります。

数年後にこの人たちが仲間になる

実習の受け入れは、業務としては純粋に負担です。誰かの手が取られ、その日の仕事は確実に遅れます。それでも続ける理由は、はっきりしています。この人たちの何人かは、数年後に私たちの仲間になるからです。

人が採れないと言い続けている業界が、目の前に来た若い人に丁寧に向き合わないのは、筋が通りません。採用活動の一番上流は、実習の一週間なのだと思っています。

夏の実習が終わったあと、「この仕事、思ったよりいいかもしれない」と一人でも思ってくれたら、その一週間は十分に元が取れています。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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