夏の疲れと「このままでいいのか」― 揺らぐ気持ちを、辞める理由にする前に

夏の疲れと「このままでいいのか」― 揺らぐ気持ちを、辞める理由にする前に

はじめに ― 夏の月曜、少し重い足で

おはようございます。木下です。

週明けの朝、体が重いと感じている方も多いのではないでしょうか。連日の暑さで、寝ても疲れが抜けない。介護の現場は夏でも止まりませんから、体力の消耗は相当なものです。そしてこの季節、体の疲れと一緒に、心にもふっとゆらぎが生じることがあります。

「私は、このままでいいのだろうか」

キャリアコンサルタントとして多くの方の話を聞いてきて、思うことがあります。こうした揺らぎは、夏の疲れが深いときほど、ひょっこり顔を出す。そして人は、いちばん消耗しているタイミングで、人生の大きな決断をしてしまいがちなのです。今日は、この夏のゆらぎとの、少し賢い付き合い方についてお話しします。

「辞めたい」の下に、本当の声が隠れている

面談で「辞めようと思っています」と切り出される。その言葉を、私はいつも、額面どおりには受け取らないようにしています。なぜなら、「辞めたい」は、たいてい表面の言葉だからです。

その下をていねいにたどっていくと、まったく別の声が隠れていることが少なくありません。「本当は認められたい」「今の働き方が体力的にきつい」「自分の成長が止まっている気がする」「一人で抱えすぎて、しんどい」。辞めたいのではなく、今のつらさを、どうにかしたい。それが本当の願いだったりします。

夏の疲れは、この表面の言葉を大きくします。普段なら「まあ、もう少し頑張るか」と流せることが、消耗しているときには「もう限界だ」に見えてしまう。だから私は、いつもこうお願いします。大きな決断は、夏の疲れが抜けてからにしませんか?。

まず、切り分けてみる ― 疲れなのか、方向なのか

揺らぎを感じたとき、一度だけ立ち止まって、自分に問うてみてほしいことがあります。

この気持ちは、「疲れ」から来ているのか。それとも「方向」から来ているのか。

もし主に「疲れ」なら ― 必要なのは転職ではなく、休息と、負担の調整かもしれません。有給を一日とる。夜勤の入り方を相談する。抱えている仕事を誰かと分ける。それだけで、驚くほど景色が変わることがあります。

もし「方向」だとしても ― つまり「本当にこの仕事を続けたいのか」という問いだとしても、答えを今すぐ出す必要はありません。むしろ、その問いを持てたことは、あなたが自分の人生を真剣に考えている証です。焦って結論を出すより、「秋になっても同じ気持ちなら、そのときちゃんと考えよう」と、いったん問いを胸にしまっておく。それでいいのだと思います。

一人で抱えず、言葉にして誰かに預ける

揺らぎがつらいのは、それを一人で抱え込んだときです。頭の中でぐるぐる回り続けると、小さな不安がどんどん大きく育ってしまう。

だからこそ、言葉にして、誰かに預けることをお勧めします。信頼できる先輩でも、家族でも、あるいは職場のキャリア面談の場でも構いません。声に出した瞬間に、「あれ、思っていたより大したことじゃないかも」と気づくことは、本当によくあります。

私自身、法人を預かる立場として、職員一人ひとりのこうした揺らぎに、どれだけ気づけているだろうかと、いつも自問しています。「元気そうに見えた人が、実はぎりぎりだった」― そういう後悔を、私は何度もしてきました。だから管理職やリーダーの皆さんには、この夏、いつもより少しだけ意識して声をかけてほしいのです。「暑いけど、体調どう?」の一言が、誰かの重い決断を、思いとどまらせるかもしれません。

おわりに ― 揺らぐのは、真剣に生きている証拠

「このままでいいのか」と揺らぐこと自体は、決して悪いことではありません。むしろ、自分の人生を大切にしているからこそ、そう問えるのです。揺らがない人などいません。

ただ、その問いに答えを出すタイミングだけは、慎重に選んでください。いちばん疲れているときに、いちばん大きな決断をしない。 これは、私が多くの方を見送り、そして見送らずに済んだ経験から、心の底からお伝えしたいことです。

まずはこの夏を、体を大事にして乗り切りましょう。揺らぎは、涼しくなったころにもう一度、静かな頭で眺めればいいのです。そのときのあなたは、きっと今より正確に、自分の本当の願いを見つけられるはずです。

新しい一週間が始まります。無理のない一歩から、まいりましょう。

今日も、良い一日をお過ごしください。

木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師
国家資格キャリアコンサルタント

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