上半期が終わり、多くの事業所で夏の面談シーズンが始まります。賞与を渡し、半年の働きをねぎらい、目標の進み具合を確かめる――大切な時間です。けれど、その面談が「年に一度の恒例行事」で終わってしまっていないでしょうか。私自身、キャリアコンサルタントとして多くの現場を見てきて、最ももったいないと感じるのが、この「せっかくの面談が単発で消えていく」光景です。
一度きりの面談は、記憶からこぼれ落ちる
面談の場では、職員も本音を口にしてくれます。「本当は相談員の仕事にも興味があって」「家庭の事情で、来年は夜勤を減らしたい」――こうした一言は、その人のキャリアの核心に触れる、貴重な言葉です。
ところが半年後、次の面談で同じ話を聞いて「あれ、そんな話をしたかな」となる。記録が残っていない、あるいは残っていても誰も見返さない。これでは、職員は「話しても何も変わらない」と学習してしまいます。面談の価値を決めるのは、その場の熱ではなく、次につながる仕組みがあるかどうかなのです。一度きりの言葉は、どんなに真剣でも、時間とともに必ずこぼれ落ちていきます。
「セルフ・キャリアドック」という考え方
そこで取り入れたいのが、厚生労働省も推奨する「セルフ・キャリアドック」の発想です。難しく考える必要はありません。要は、定期的なキャリア面談と、その記録・振り返りを、事業所の”仕組み”として組み込むということです。
大切なのは三つ。ひとつ、面談を年1回ではなく、半年ごとなど周期を決めて必ず行うこと。ふたつ、前回何を話したかを簡単な記録に残し、面談の冒頭で「前回はこう話していましたね」と振り返ること。みっつ、そこで出た希望を、配置や研修の計画に少しずつでも反映していくこと。この三つが回り始めると、面談は「行事」から「その人の成長を追う連続したドラマ」に変わります。健康診断のように、キャリアも定期的に点検する――それがドックという言葉の意味です。
変化を追う視線が、人を辞めさせない
なぜここまで「継続」にこだわるのか。それは、人が職場を離れる理由の多くが、待遇そのものより「ここにいても自分は成長できない」という静かな諦めだからです。
半年前の希望を覚えていてくれる上司。「前に話してくれた相談員の件、今度こういう研修があるよ」と声をかけてくれる法人。そのひと言があるだけで、職員は「自分は見てもらえている」と感じます。キャリア支援とは、立派な制度を作ることではなく、一人ひとりの変化を追い続ける視線そのものなのだと、私は思うのです。
もちろん、記録や周期の管理には手間がかかります。だからこそ、簡単なフォーマットを一枚用意し、面談記録の要約を生成AIに手伝ってもらうなど、負担を軽くする工夫と組み合わせてください。この夏の面談を、一度きりの行事ではなく、来年へとつながる最初の一歩にする。その積み重ねが、人が育ち、辞めない職場をつくっていきます。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


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