「私がここで働く理由」を、言葉にしてみる ― 立ち止まって初心に触れる夏に

「私がここで働く理由」を、言葉にしてみる ― 立ち止まって初心に触れる夏に

7月に入り、夏の暑さが本格化してきました。賞与が支給され、年度の前半を走り抜けて、少しだけ肩の力が抜けるこの時期。ふとした瞬間に、「自分は何のためにこの仕事を続けているんだろう」と、静かに考えてしまう方も少なくないのではないでしょうか。

明日、私たちNPO法人ちとせの介護医療連携の会では、演題発表会2026「1up! 私がここで働く理由!」を開催します。この「私がここで働く理由」というテーマを職員たちと決めたとき、私の胸にも同じ問いがまっすぐ返ってきました。だから今日は、登壇する人だけでなく、これを読んでくださっているあなた自身にも、少しだけ考えてみてほしいのです。あなたが、いま、ここで働いている理由を。

「なんとなく続けている」の奥にあるもの

改まって「働く理由は?」と問われると、多くの人は言葉に詰まります。「生活のため」「たまたま縁があって」――最初はそんな答えが出てくるかもしれません。それはそれで、正直で大切な理由です。

けれど、もう一歩だけ奥を覗いてみてください。なぜ、数ある仕事の中で、今もこの現場に立ち続けているのか。 給料のためだけなら、もっと楽な仕事もあったはずです。それでも辞めずにここにいるのは、きっとあなたの中に、言葉になっていない「続ける理由」があるからです。

あの利用者さんの、ふと見せてくれた笑顔。「あなたでよかった」と言われた、あの日の帰り道。同僚と支え合って乗り越えた、あの夜勤。――そういう小さな記憶の積み重ねが、実はあなたを支えている。忙しさの中で忘れかけていた、その原点に触れてみる。それが、この夏におすすめしたいささやかな作業です。

言葉にすると、キャリアの足元が固まる

キャリアコンサルタントとして、私はたくさんの方の「働く理由」に耳を傾けてきました。そして確信しているのは、自分の働く理由を言葉にできる人は、迷ったときに折れにくいということです。

理由が曖昧なままだと、人は環境や待遇に振り回されます。少し嫌なことがあると「もう辞めようか」と揺れる。けれど、「自分はこういう瞬間に喜びを感じるから、この仕事を選んでいる」と言葉にできている人は、同じ困難の前でも踏みとどまれる。キャリアの軸とは、立派な目標ではなく、自分の中にある小さな『これがしたい』を言葉にしたものなのだと思います。

うまくまとまらなくても構いません。ノートの片隅に、あるいはスマホのメモに、一行だけでいい。「私がこの仕事を続けているのは、○○だから」。書いてみると、自分でも意外な言葉が出てくることがあります。

揺れてもいい、それも含めて「理由」

もちろん、「理由なんて、今は思い浮かばない」という方もいるでしょう。疲れ切って、働く意味を見失いかけている――そんな時期もあります。私自身、何度もそういう夜を過ごしてきました。

でも、それでいいのです。理由が揺らぐのは、真剣に働いてきた証です。揺らぎながら、その都度、自分に問い直していく。その繰り返しこそがキャリアなのだと、私は思っています。答えが出なくても、問い続けている限り、あなたは自分の人生の主人公であり続けられます。

明日の発表会では、仲間たちがそれぞれの「働く理由」を、5分間の言葉に込めて語ってくれます。誰かの理由に触れると、不思議と自分の理由も見えてくるものです。会場にいらっしゃる方も、これを読んで心に問いを持った方も、どうか一度、立ち止まってみてください。

暑い夏こそ、少しだけ歩みをゆるめて、自分の初心に触れる。その時間が、後半戦を歩むあなたの、確かな足場になりますように。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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