下半期の研修を、AIと組み立てる ― 指導担当者の準備時間を半分にする

下半期の研修を、AIと組み立てる ― 指導担当者の準備時間を半分にする

7月に入りました。年度でいえば折り返しを過ぎ、いよいよ下半期の始まりです。この時期、多くの事業所で「後半の研修、どうしようか」という声が上がり始めます。上期にやり残したテーマ、法改正への対応、新人のフォローアップ――やりたいことは山ほどあるのに、いざ資料をつくる時間が取れない。指導担当者や管理者が、通常業務の合間を縫って夜なべで資料を仕上げている姿を、私は何度も見てきました。

正直に申し上げると、私自身もかつて研修資料づくりに追われ、「これは誰のための時間なんだろう」と虚しくなったことがあります。だからこそ、今日は生成AIを使って、その負担を実際に軽くする方法をお伝えしたいのです。AIに任せられる部分は任せて、人にしかできない部分に力を注ぐ。その線引きの実例だと思って読んでいただければ幸いです。

まず「年間計画のたたき台」をAIに出させる

いきなり個別の資料をつくろうとすると、手が止まります。最初にやるべきは、下半期の研修テーマを俯瞰することです。

たとえばAIにこう頼みます。「介護事業所で7月から3月に実施する研修の年間計画案を、法定研修(虐待防止・身体拘束・感染症・BCPなど)を含めて月別に提案してください」。すると、抜け漏れのない骨組みが数十秒で返ってきます。ゼロから考えるのではなく、出てきた案を『取捨選択する』側に回れる。これだけで、心理的な負担がまるで違います。

もちろん、AIが出す計画はあくまで一般論です。自分の事業所の実情――先月ヒヤリハットが多かった、新人が3人いる、といった固有の事情は、ここで人が加えていく。AIは土台を、人は魂を入れる。この役割分担が肝心です。

資料の「初稿」はAIに、確認は必ず人が

テーマが決まったら、個別資料の初稿もAIに下書きさせます。「身体拘束適正化の研修資料を、現場職員向けに、事例を交えて15分で話せる分量で」。導入・本論・まとめの構成で、話し言葉に近い原稿が出てきます。

ただし、ここで強くお願いしたいことがあります。法令の数字や制度の内容は、必ず一次資料で裏を取ってください。 生成AIは、もっともらしい嘘(ハルシネーション)を混ぜることがあります。加算の要件や法改正の施行日といった「間違えてはいけない事実」は、厚労省の通知や自治体の資料で確認する。この一手間を省いた瞬間、AIは頼れる助手から危険な同僚に変わります。

浮いた時間を、どこに使うか

こうしてAIに骨組みと初稿を任せると、準備時間は体感で半分ほどになります。では、浮いた時間で何をするか。ここが、いちばん大切なところです。

私は、その時間を「参加する職員の顔を思い浮かべる時間」に使ってほしいと思っています。あの新人はここでつまずくだろうから事例を一つ足そう、ベテランには問いを投げて経験を語ってもらおう――。研修を血の通ったものにするのは、いつだって人の側の配慮です。AIが効率を担ってくれるからこそ、私たちは「その人のための研修」という、機械にできない仕事に集中できる。

下半期の始まりに、少しだけAIの手を借りてみる。空いた時間で、目の前の職員一人ひとりに、もう一歩踏み込む。そんな後半戦の研修を、皆さんの事業所でも試していただけたらと願っています。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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