今日は6月30日。一年のちょうど半分が過ぎる日であり、神社では「夏越の祓(なごしのはらえ)」が行われる日です。茅の輪をくぐり、半年分の穢れや厄を落として、残り半年を清々しく歩み出す――そんな日本の節目の行事ですね。
経営にも、同じことが言える気がしています。4月から始まった新年度の第1四半期が、今日で終わります。賞与を払い終え、新人を迎え、慌ただしく走り抜けた3か月。ここで一度立ち止まって、溜まった「経営の厄」を落としておかないと、夏の繁忙期にそのまま引きずってしまう。 私は毎年この時期、そう自分に言い聞かせています。
正直に言えば、私自身も日々の業務に追われ、振り返りを後回しにしがちです。だからこそ、今日という日を口実に、机の前に座る時間を確保しています。今日は私が大切にしている「3つの棚卸し」を、皆さんと共有させてください。
1. 数字の棚卸し ― 「賞与を払った後」の手元を見る
まず向き合うべきは、4〜6月の数字です。とはいえ、ここで見たいのは華やかな売上ではありません。賞与という大きな支出を終えた、今この瞬間の手元資金です。
夏の賞与は、職員へのねぎらいであると同時に、法人にとっては年間で最も重いキャッシュアウトの一つ。これを払い終えた6月末こそ、資金繰りの実力が裸で見える時期です。「黒字なのに、なぜか通帳が薄い」――その感覚の正体を、四半期の数字で確かめておく。稼働率、人件費率、そして手元の現預金。この3つを並べるだけでも、後半戦の景色がずいぶん変わります。
数字を見るのは、決して気持ちのいい作業ばかりではありません。けれど、見ないまま不安を抱えているより、見て事実を知るほうが、よほど心は軽くなる。これも一つの「祓い」だと思っています。
2. 人の棚卸し ― 4月入職者の「3か月の壁」
6月末は、4月に入職した新人が、ちょうど試用期間を終える頃でもあります。緊張の春が過ぎ、仕事に慣れてきた一方で、「思っていたのと違った」という小さな違和感が芽生えやすい時期。いわゆる「3か月の壁」です。
数字には表れませんが、ここでの一声が、その後の定着を大きく左右します。「もう3か月だね、よくここまで来てくれた」――たったそれだけの言葉が、迷い始めた心を引き留めることがある。私は管理者たちに、四半期末のこのタイミングで、新人一人ひとりと短くていいから面談の時間を持つようお願いしています。
同時に、中堅やベテランの「疲れの兆し」にも目を配りたい。賞与という区切りは、実は退職を考える人が動きやすい時期でもあります。人の心の棚卸しは、数字より難しく、けれど数字より大切です。
3. 課題の棚卸し ― 「いつかやる」を手放す勇気
最後は、溜まりに溜まった「いつかやろう」のリストです。BCPの見直し、記録様式の整理、研修計画の手直し……。気にはなっているけれど、手がつかないまま4〜6月を越えてきた宿題が、誰しもあるはずです。
夏越の祓の本質は、「抱え込んだものを、いったん手放す」ことにあります。経営の課題も同じで、すべてを後半でやり切ろうとすると、かえって動けなくなる。だから私は、このリストを前に二つに仕分けます。「後半で必ずやる」ものと、「思い切ってやめる・諦める」ものに。
やめる決断は、新しいことを始める決断と同じくらい、経営者にとって大事な仕事です。手放して身軽になってこそ、本当に大切なものに力を注げる。茅の輪をくぐるように、一度すべてを下ろしてみる。それが残り半年を軽やかに歩むための、私なりの作法です。
第1四半期の終わりに、数字と、人と、課題を棚卸しする。地味で、誰に褒められるわけでもない作業ですが、この「祓い」を済ませた年の後半は、不思議と足取りが軽くなります。
半年、本当にお疲れさまでした。一度、肩の荷を下ろしましょう。そしてまた明日から、清々しい気持ちで後半戦を始めたいものですね。皆さまの法人にとって、7月からの半年が実り多きものになりますように。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


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