「教える側」を、ひとりにしない ― 新人指導担当者を支えるということ

「教える側」を、ひとりにしない ― 新人指導担当者を支えるということ

4月に入職した新人が、そろそろ3か月目を迎えます。少しずつ現場に慣れ、表情が和らいでくる頃です。新人の成長に目が向きがちな季節ですが、今日はあえて、その新人を支えている「教える側」の職員に目を向けたいと思います。

非常勤で教壇に立つ立場として、また現場を預かる者として、私はこの「教える人の疲れ」を、もっと真剣に考えなければならないと感じています。

指導担当者は、静かに疲れている

新人にプリセプター(指導担当者)をつける事業所は増えました。けれど、その指導担当者自身が、どれほどの負担を抱えているか。そこに気づいている管理者は、案外少ないのではないでしょうか。

自分の業務をこなしながら、新人の一挙手一投足に気を配る。質問に答え、ときに同じことを何度も伝え、失敗をフォローする。新人がうまく育たなければ「自分の教え方が悪いのか」と責任を感じる――。指導担当者は、新人とはまた違う種類の重圧を、静かに背負っているのです。3か月目の今、その疲れがじわりと表れてくる頃でもあります。

「教え方」は、教わっていない

ここに、ひとつの落とし穴があります。多くの指導担当者は、介護のプロではあっても、「人に教えるプロ」として育てられたわけではないということです。

自分が見て覚えてきた人ほど、「なぜ伝わらないのか」に戸惑います。よかれと思った指導が、新人を萎縮させてしまうこともある。これは指導担当者の能力の問題ではなく、教え方を学ぶ機会を組織が用意してこなかった、という構造の問題です。フィードバックの仕方、待つことの大切さ、できたことを認める言葉のかけ方――こうした「教える技術」は、学べば誰でも身につけられます。

組織で支える仕組みを

指導担当者をひとりにしないために、できることがあります。指導担当者同士が悩みを話せる場をつくる。管理者が定期的に「困っていることはない?」と声をかける。新人の育成責任を、担当者個人ではなく組織で引き受ける――。

「あなたに任せたから」という言葉は、信頼であると同時に、丸投げにもなりかねません。任せると同時に、支える。 その両方があってはじめて、指導担当者は安心して新人と向き合えます。

教える人が育つ職場は、強い

教える経験は、本来とても豊かな学びの機会です。人に伝えようとすることで、自分のケアを言葉にし、見つめ直す。後輩の成長を喜べる職員は、自分自身も成長していきます。

だからこそ、教える側を大切にしたい。教える人が前向きでいられる職場は、新人もまた、のびのびと育っていきます。人が人を育てる連鎖を、どこかで途切れさせないこと。 それが、教育に関わる私たちの、いちばん大切な仕事なのだと思います。

新人を見守るそのまなざしを、今日は少しだけ、教える側の職員にも向けてみませんか。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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