夏が近づくと、地域のあちこちで夏祭りや盆踊りの準備が始まります。介護の世界では「行事の季節」として捉えられがちですが、私はもう少し広い意味を感じています。夏祭りは、介護事業所が地域とつながり直す、またとない接点になるのではないか、と。
出張先の街でも、商店街に提灯が並び始めていました。その光景を見ながら、地域連携のことを考えていました。
「行事のための行事」になっていないか
多くの事業所が、夏になれば施設内で夏祭りを開きます。ご利用者に浴衣を着ていただき、屋台を出し、職員が踊る。それ自体はとても良いことです。
けれど、正直に問い直してみたいのです。その夏祭りは、施設の「中」だけで完結していないでしょうか。せっかくの機会なのに、地域の人が一人も訪れない。近所の子どもたちも、商店街の人も知らないまま終わってしまう。それは少し、もったいないように思うのです。
地域に「開く」ことの意味
私が大切にしたいのは、行事を地域に開くという発想です。近隣の子ども会に声をかける。町内会の役員さんを招く。地元の高校生にボランティアで関わってもらう。商店街から屋台の品を仕入れる――。
こうした小さな関わりが、平時のうちに「顔の見える関係」を育てます。そして、その関係こそが、いざ災害が起きたときに、避難や安否確認で本当に力を発揮するのです。地域連携は、緊急時に急ごしらえでできるものではありません。夏祭りのような穏やかな日々の積み重ねが、地域の支え合いの土台になります。
介護を「見てもらう」機会として
地域に開くことには、もう一つ大きな意味があります。介護の仕事を、地域の人に実際に見てもらえるのです。
職員が生き生きと働く姿、ご利用者の笑顔、認知症の方との自然な関わり――。こうした光景に触れることが、介護への理解を深め、ときには「ここで働いてみたい」という人を生むことすらあります。人材不足が深刻な今、地域に開かれた事業所であることは、採用の面でも確かな力になります。
小さな一歩から
もちろん、いきなり大々的に開く必要はありません。今年は町内会に案内を一枚届けてみる。来年は子ども会を招いてみる――。そんな小さな一歩で十分です。
地域に支えられ、地域を支える。その循環の入口に、夏祭りという温かな接点がある。提灯の灯りを見上げながら、私はそんなふうに感じています。今年の夏は、少しだけ「外」に向けて扉を開いてみませんか。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


コメントを残す