6月も下旬に入りました。気がつけば今年も半分が過ぎようとしています。賞与の支給や年度更新、算定基礎届と、6月は事務作業に追われる月でもあり、正直なところ「振り返りなんて、とても手が回らない」というのが多くの経営者の本音ではないでしょうか。私自身、毎年この時期は目の前の処理で精一杯になりがちです。
けれど、だからこそ立ち止まりたいのです。上半期に現場で起きたことを、きちんと言葉にして拾い直す。その作業に、生成AIはとても頼りになる相棒になってくれます。
「忙しさ」が振り返りを奪う
日々の介護現場は、振り返る時間をなかなか与えてくれません。ヒヤリハットも、ご家族からのありがたい一言も、職員のちょっとした気づきも、その日のうちに記録には残っても、半年というスパンで「で、結局なにが見えてきたのか」を整理する機会は、意外なほど少ないものです。
データはある。日誌もある。事故報告書も、面談記録もある。けれど、それらは別々のファイルに眠ったまま、誰も全体を俯瞰しないまま流れていく。――これは、本当にもったいないことだと感じてきました。
AIは「分類」と「問い直し」が得意
ここで生成AIの出番です。たとえば、上半期のヒヤリハット報告をまとめてAIに渡し、「どんな場面・時間帯・原因に偏りがあるか、傾向を3つに分類して」と頼んでみる。人間が一件ずつ読み込めば半日かかる作業が、ものの数分で「見取り図」になります。
大切なのは、AIに答えを出させるのではなく、問いを立てる材料を作らせるという使い方です。「夕方の移乗時にヒヤリハットが集中している」とAIが指摘してくれたなら、「なぜ夕方なのか」「人員配置の問題か、疲労の問題か」と考えるのは、現場を知る私たち人間の仕事です。AIは、忙しさに埋もれて見えなくなっていた問いを、もう一度こちらの目の前に差し出してくれる。そういう役割なのだと思います。
数字の裏にある「人の声」も拾う
振り返りというと、つい稼働率や収支といった数字に目が行きます。もちろんそれも大切です。けれど私が一番大事にしたいのは、職員やご家族から寄せられた言葉です。
満足度アンケートの自由記述、面談で出た何気ないつぶやき、退職した職員が最後に残してくれた一言。こうした「声」は数が多く、感情がこもっている分、人が読むと一件一件に心を動かされて、かえって全体像を見失いがちです。AIに「この声の中で繰り返し出てくるテーマと、その奥にある感情を整理して」と渡すと、自分では気づけなかった共通の願いや不満が、静かに浮かび上がってきます。
正直に言えば、そうやって浮かび上がった声に、胸が痛むこともあります。「もっと早く気づいていれば」と。けれど、目をそらさずに受け止めることこそが、下半期を良くする第一歩なのだと、自分に言い聞かせています。
振り返りは、下半期への「贈り物」
上半期を振り返るのは、過去を採点するためではありません。残り半年を、職員にとってもご利用者にとっても、少しでも良いものにするためです。
AIを使えば、その整理にかかる時間と労力は驚くほど減らせます。空いた時間とエネルギーを、本来やるべき「考えること」「対話すること」に回せる。――これこそ、私が現場にAIを勧め続けている理由です。
半年分の気づきを、忙しさの中に埋もれさせない。この週末、コーヒーでも片手に、AIと一緒に上半期を振り返ってみてはいかがでしょうか。きっと、下半期の一手が見えてくるはずです。
木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)


コメントを残す