はじめに ― 5月最後の日曜日に
おはようございます。木下です。
本日5月31日、日曜日。5月の最終日であり、明日からは6月です。月末・月初というのは、経営者にとって一つの区切りであり、振り返りと計画の自然なタイミングでもあります。
先日のブログ(「AI実装はどこから始めるか」)では、介護法人がAIをどこから導入すべきか、その優先順位の考え方を書きました。今日はもう少し具体に踏み込んで、経営者自身の「月末ルーティン」に、生成AIをどう組み込むかを、私の実際の使い方を交えて書いてみたいと思います。日曜の朝、少し肩の力を抜いて読んでいただければと思います。
月末こそ、生成AIが最も効く場面
私はこれまで、AIの介護現場への導入について、記録の効率化やセキュリティの注意点(5月15日、5月22日)を繰り返し書いてきました。現場業務へのAI導入は、慎重な検討が必要な領域です。
一方で、経営者個人の思考の整理という用途は、はるかに導入のハードルが低く、効果が出やすい領域です。理由は単純で、ここには個人情報やご利用者の機微情報が必ずしも関与せず、経営者自身の頭の中を言語化する作業だからです。月末の振り返りは、まさにこの用途の典型です。
月末、経営者の頭の中には、たくさんの「処理しきれていない情報」が漂っています。今月あった出来事、決めかねている判断、来月やるべきこと、気になっている職員の様子 ― これらが整理されないまま、なんとなく次の月へ持ち越されていく。この「漂っている状態」を、生成AIとの対話で輪郭のあるものに変えていく。これが、私が月末ルーティンにAIを使う理由です。
私が月末にやっている、3つのAI活用
具体的に、私が5月末の今日、実際に行っている使い方を3つ紹介します。特別な道具は要りません。手元の生成AIに、話しかけるだけです。
1. 「今月の出来事」を、ただ書き出して整理させる
まず、今月起きたことを、思いつくままにAIに箇条書きで投げます。順番も粒度もバラバラで構いません。
たとえば5月であれば ― 連携の会の通常総会、ACP連携カレッジの研修、恵庭での在宅看取りをテーマにした映画と講演、7病院共通規程の打ち合わせ、新人面談、賞与の検討… こうした出来事を雑然と並べ、「これを、地域連携・経営・教育・人材の観点で分類して、それぞれ一行で要約して」と頼みます。
すると、漂っていた一か月が、構造を持った一枚の見取り図になります。自分では「忙しかった」としか言えなかった一か月が、「今月は地域連携の活動が特に厚かった」「経営判断は賞与に集中していた」といった輪郭をもって見えてくる。この客観化が、月末の振り返りの第一歩です。
2. 「来月の判断」の論点を、洗い出させる
次に、6月に控えている判断を投げ、「この判断について、私が見落としていそうな論点を挙げて」と問います。
生成AIは、答えを出すよりも、「問いを増やす」用途でこそ真価を発揮します。賞与の配分、夏以降の研修企画、連携先名簿の更新、人員配置 ― こうした判断について、自分一人では気づかなかった観点を提示してくれます。もちろん、的外れな指摘も混ざります。しかし的外れな指摘を「それは違う」と否定する過程そのものが、自分の判断軸を明確にしてくれるのです。
ここで大切なのは、AIに決めさせないことです。論点は広げてもらう。決めるのは自分。この役割分担を崩さないことが、経営者がAIを使ううえでの一線だと、私は考えています。
3. 「言葉にしづらいこと」の壁打ち相手にする
3つめは、もう少し柔らかい使い方です。月末になると、数字にも予定にもならない、もやもやとした問題意識が残ることがあります。「あの職員、最近元気がないように見える」「この連携、形だけになっていないか」 ― こうした言語化しづらい感覚を、AIに向かって話してみる。
AIは判断も評価もしません。ただ、こちらが話したことを受け止め、整理し、問いを返してくれます。誰かに相談するほどではないけれど、自分の中だけに留めておくと埋もれてしまう ― そういう「経営者の独り言」の受け皿として、生成AIは思いのほか役に立ちます。これは、人に話す前の思考の下書きのようなものです。
「AIに任せること」と「自分でやること」の線引き
ここまで読んで、「結局、AIに頼りすぎではないか」と感じた方もいるかもしれません。だからこそ、線引きをはっきりさせておきます。
私が月末ルーティンでAIに任せているのは、あくまで情報の整理・分類・論点の洗い出しです。一方、価値判断・最終決定・人への言葉がけは、すべて自分でやります。
以前のブログ(「AIに任せられないもの ― 五感のケア」)でも書いた通り、介護の本質は、AIには代替できない領域にあります。経営の判断も同じです。AIは、判断のための材料を素早く整えてくれる優秀な助手ですが、何を大切にするかを決めるのは、最後まで人間の仕事です。
この線引きさえ守れば、生成AIは、月末の経営者にとって極めて頼もしい相棒になります。
おわりに ― 6月を「設計して」迎える
月末は、ただ過ぎていくものではなく、意図的に区切りをつけるものだと思います。漂っている一か月を整理し、来月の論点を洗い出し、言葉にならない感覚を一度言葉にしてみる。この一連の作業を、生成AIという道具が、驚くほど軽くしてくれます。
私自身、この5月末の振り返りを通じて、6月は「地域連携の顔と名前の更新」と「賞与に込めるメッセージ」を重点にしようと、頭の中が整理できました。日曜日の朝、もし経営や管理の立場で読んでくださっている方がいらっしゃれば、ぜひ今日という月末の一日に、5月を振り返り、6月を設計する時間を、少しだけ取ってみてください。その壁打ち相手として、生成AIを一度試してみるのも、よいかもしれません。
良い日曜日を、そして良い6月のはじまりを、お迎えください。
木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師


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