「介護連携指導料」と「ケアカフェ」の両輪 ― 制度と関係を、どちらも育てるという話

「介護連携指導料」と「ケアカフェ」の両輪 ― 制度と関係を、どちらも育てるという話

はじめに ― 同じ日の午後と夕方に、両方の打ち合わせがある

おはようございます。木下です。

本日5月19日、火曜日。私の今日の予定表には、興味深い並びがあります。

この2つは、一見すると別の話に見えます。前者は診療報酬という「制度」の話、後者は地域の介護関係者がゆるく集まる「人間関係」の話だからです。

ところが、地域連携の現場では、この2つは完全に車の両輪です。片方だけを回しても、地域は前に進みません。 今日はそのことを、ちょうど両方の打ち合わせを目前にしているこのタイミングで書き残しておきたいと思います。

5月11日のブログの続きとして

5月11日のブログで、令和8年度診療報酬改定で新設された 「介護支援等連携指導料2」(500点) について書きました。従来の指導料1(400点)に上乗せされた100点分は、

という3つの体制要件すべてを満たした病院だけが算定できます。これは単なる点数加算ではなく、「平時から地域に組み込まれている病院」を診療報酬で評価する仕組み という構造改革です。

あれから1週間あまり、千歳市内の病院・診療所・ケアマネ事業所・地域包括支援センターと意見交換を重ねてきました。本日午後の打ち合わせは、その実装フェーズに入る段階の議論になります。そして、議論を進めれば進めるほど、「算定要件を満たすこと」と「実際に連携が機能すること」は同じではない という事実が、改めて鮮明になってきました。

算定要件を満たしただけでは、連携にはならない

ここから先は、制度を作る側の理屈ではなく、現場を回す側の話です。

仮にある病院が、指導料2の3つの要件を完璧に整えたとします。

書類のうえでは満点です。しかし、それで実際の入退院時に、ケアマネジャー・在宅医・サービス事業所との連携がスムーズに回るかというと、答えは「回るときと、回らないときがある」になります。

なぜ差が出るのか。決定打になるのは、たいていの場合、書類ではなく「人と人の顔が見えているか」 です。

これらは、指導料の算定要件の文章には書かれていません。しかし、ここが整っていない地域では、500点の加算を取れても、現場のフラストレーションは減りません。逆にここが整っている地域では、指導料1(400点)の算定でも、連携は驚くほど滑らかに動きます。

制度は「最低限の足場」を作るが、連携を回しているのは結局「関係」 ――これが、長年地域連携に関わってきた私の実感です。

ケアカフェという「非公式の場」が果たしている役割

そこで、今日の夕方の ケアカフェ打ち合わせ につながります。

ケアカフェは、千歳市の地域連携の中で、私たちが意図的に作り続けてきた 「非公式の場」 です。形式は極めて軽く、

これだけの場です。「研修」「会議」「情報交換会」のいずれにも当てはまらない、業務と私的の中間にある場 と言ってよいと思います。

ケアカフェに参加してくださる方々の多くは、最初は「行ったほうがいいのかな」「義務なのかな」と戸惑います。ところが、2回・3回と参加するうちに、次のような変化が起きます。

そして数か月後、業務の場面でこの方々が再会したとき、最初の電話の入り方が、明らかに変わります。「もしもし、◯◯病院の△△と申しますが」ではなく、「△△です、お久しぶりです、ちょっと相談なんですが」になる。たったこれだけの違いが、入退院支援の現場では、信じられないほど大きな差を生みます。

ケアカフェは、指導料2の【イ】「平時からの多職種連携体制」を、書類ではなく人の記憶として構築する装置 だと、私は捉えています。

「制度」と「関係」を、両方育てる

ここで強調したいのは、ケアカフェのような非公式の場だけがあればいい、という話ではない、という点です。

非公式の場は、参加者の属人的な人間関係に依存します。担当者が異動・退職すれば、関係はリセットされます。これに対して、

といった制度の側 は、担当者が変わっても残ります。新任の看護師・新任のケアマネが赴任しても、書式と規程は引き継がれます。

つまり、

強み弱み
制度(指導料・書式・規程)担当者が変わっても残る形式的になりやすい
関係(ケアカフェ・連携カレッジ)業務を実際に動かす担当者異動でリセットされやすい

それぞれに、補完しあう強みと弱みがあります。地域連携を持続可能にするためには、この両方を並行して育てる必要がある のです。どちらか片方だけでは、5年後・10年後にきれいに機能しなくなります。

千歳市での実装 ― 両輪をどう回しているか

千歳市での運用実態を、改めて整理しておきます。

制度側の整備

関係側の整備

この 「制度の足場」+「関係の質感」 をセットで設計してきたことが、千歳市での地域連携の特色です。どちらか片方だけでは、ここまでの厚みは出ません。

病院・介護事業所の管理者の皆さんへ

ここから、本日の打ち合わせを前に、関係機関の管理者の皆さんに改めてお伝えしたい点を書いておきます。

1. 指導料2は、地域連携を「業務化」する貴重な機会

これまで、地域連携への参加は、現場職員の善意と志に大きく依存してきました。指導料2が新設されたことで、地域ケア会議への出席や、ケアマネとの平時連携が、診療報酬上の評価対象になった ことは、極めて大きな転換点です。

院長・事務長・看護部長クラスの方々には、この機会を活かして、地域連携担当者の人員配置・時間配分を正式に位置づけてほしいと思います。「片手間でやってもらう」フェーズは、もう終わりました。

2. 算定要件の準備と並行して、関係づくりへの参加を

書類整備だけ済ませて、ケアカフェ・連携カレッジへの参加が滞ると、結局現場での連携は動きません。書類は3か月で整えられるが、関係づくりには1年〜2年かかります。 算定要件の準備と並行して、職員を地域の集まりに継続的に送り出していただきたいと思います。

3. 担当者異動の前後で、関係を「引き継ぐ」工夫を

非公式な関係は、担当者が変わるとリセットされやすい弱点があります。前任者と後任者が一緒に1〜2回はケアカフェ・連携会議に参加し、「あの人の後任です」と紹介される儀礼を、組織として位置づけてほしい。これは制度では強制できませんが、地域連携の持続性を大きく左右します。

おわりに ― 制度は強く、関係はしなやかに

地域連携は、制度だけでも、関係だけでも、回りません。

この強さとしなやかさを、両方持つ地域 が、これからの少子高齢化のなかで持続可能な医療・介護を支えます。指導料2が新設された今、私たちは「制度を整える側」と「関係を育てる側」の両方に、同じくらいの本気度で取り組む必要があります。

本日午後、北ガス3F視聴覚室での打ち合わせと、夕方のケアカフェ打ち合わせ。私自身、両方の場で、この「両輪」を意識して議論に臨みたいと思います。

千歳市の地域連携が、5年後・10年後も、形だけでなく実態として動き続けるために。

良い火曜日を、お過ごしください。

木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師
国家資格キャリアコンサルタント

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