4月の主役は新人だけではない ― 中堅職員の成長を支える組織の仕組みづくり

4月の主役は新人だけではない ― 中堅職員の成長を支える組織の仕組みづくり

4月も下旬を迎え、新人職員が少しずつ現場に慣れ始めるこの時期。研修プログラムや教育担当の配置など、新人に対する支援体制は多くの事業所で整ってきました。しかし、その陰でひっそりと「自分はこのままでいいのだろうか」と立ち止まっている中堅職員の存在に、皆さんはお気づきでしょうか。入職3年目から7年目あたりの職員が抱える「キャリアの踊り場」は、離職の大きな引き金になり得ます。今回は、新人育成と同じくらい大切な中堅職員の成長支援について考えます。

中堅職員が抱える「見えにくい停滞感」

新人の頃は、できることが日々増えていく実感がありました。しかし一通りの業務をこなせるようになると、成長のスピードは緩やかになります。周囲からは「もう一人前だから大丈夫」と見なされ、研修の機会も新人や管理職に比べて少なくなりがちです。

キャリアコンサルタントとして現場の声を聴くなかで、中堅職員からこんな言葉をよく耳にします。

これらは決して贅沢な悩みではありません。成長実感の欠如は、やりがいの喪失に直結するのです。

なぜ中堅職員の支援が経営課題なのか

介護業界の離職率をみると、経験年数3〜5年の層が最も流動性が高いというデータがあります。新人の早期離職ばかりが注目されますが、実は事業所にとって最も痛手が大きいのは、現場を支える中堅職員の離職です。

中堅職員は利用者との信頼関係が構築されており、業務の核を担っています。一人が抜ければ、チーム全体のケアの質が低下し、残された職員の負担が増え、さらなる離職を招く悪循環に陥ります。つまり、中堅職員の成長支援は、ケアの質の維持と経営の安定の両方に関わる重要な投資なのです。

成長を支える3つの仕組み

1. 定期的な「キャリア面談」の導入

評価面談とは別に、年に2〜3回、本人の「これからどう働きたいか」を聴く場を設けましょう。面談のポイントは、上司が答えを与えることではなく、本人の内省を促すことです。

こうした問いを通じて、本人も気づいていなかった「ありたい姿」が言語化されていきます。キャリアコンサルティングの現場で大切にしている「答えは本人の中にある」という姿勢が、ここでも活きてきます。

2. 「ナナメの関係」による学びの場

同じ事業所の上司・部下という縦の関係だけでなく、他事業所の同世代や異なる職種との交流が、中堅職員の視野を広げます。地域の合同研修やオンラインの事例検討会など、事業所の壁を越えた「ナナメの関係」が刺激になります。

「自分の事業所のやり方が当たり前だと思っていたけれど、他のやり方もあると知って視界が開けた」という声は、こうした場から生まれます。地域包括ケアの時代、連携の力は利用者支援だけでなく、人材育成にも発揮されるのです。

3. 小さな「役割の拡張」を意図的につくる

「リーダーに昇格する」という大きなステップの前に、段階的な役割拡張を設計することが効果的です。

役割が変わると、見える景色が変わります。そして見える景色が変わると、「自分にはまだ成長の余地がある」という実感が生まれるのです。

「選ばれる事業所」は中堅を大切にする

これからの介護人材は「選んで働く」時代です。求人票の給与や待遇だけでなく、「この事業所で働き続けたら、自分はどう成長できるのか」を見ています。新人を大切に育てる事業所は多くなりました。しかし、入職3年目以降の職員に対しても明確な成長ビジョンを示せる事業所こそが、長く選ばれ続けるのだと考えます。

中堅職員が成長し、やりがいを感じながら働いている姿は、新人にとって最高のロールモデルになります。それは「この事業所で頑張れば、自分もあんなふうになれる」という希望です。人材育成の好循環は、中堅職員の成長支援から始まるのです。

明日から始める3つのアクション

  1. 中堅職員リストの作成 ― 入職3年目以上の職員を一覧化し、最後にキャリアについて話した日付を確認する
  2. 15分間の声かけ ― 「最近、仕事でどんなことを感じている?」と、評価ではなく本人の気持ちを聴く時間をつくる
  3. GW明けのキャリア面談の計画 ― 5月中に1人ずつ30分の面談を設定し、カレンダーに入れてしまう

新年度の慌ただしさが少し落ち着くこの時期だからこそ、中堅職員一人ひとりの声に耳を傾ける時間を意識的につくっていただければと思います。


木下浩志(NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長/株式会社MCL 取締役/北海道介護福祉学校 非常勤講師/キャリアコンサルタント)

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