おはようございます。今日は連休明け、最初の出勤日という方が多いのではないでしょうか。
カレンダー上では「ただの木曜日」ですが、長い休みのあとの初日は、心と体のリズムが一段ズレている日でもあります。私自身、朝の出勤前に少し机に向かい、頭の中を整える時間を取りました。介護現場のキャリアコンサルタントとして、毎年この時期に強く感じることがあります。
連休明け初日は、一年でもっともキャリアの言語化に向いている日のひとつ。
普段は目の前のシフトと利用者さま対応で時間が溶けていきますが、休みのあいだに一度仕事から離れたことで、「自分はこの仕事をどう感じていたのか」がほんの少し見える状態になっています。今日はその余白を活かして、自分自身、そして職員に投げかけてほしい3つの問いを共有します。
なぜ「連休明け」なのか
人事の世界では、長期休暇明けは離職リスクが高まる時期だと言われます。介護現場でも同じです。年末年始、GW、お盆 ― 連休のあいだに「このまま続けるか」を考えた職員が、休み明けに動き始めるケースは珍しくありません。
ただ、これは決してネガティブな話だけではありません。「立ち止まって考えられた」こと自体は、キャリアにとって健全な状態 です。問題は、その揺れを誰とも共有しないまま、もやもやだけが残ることです。
経営者・管理者にとって連休明け初日は、「離職を止める日」ではなく、揺れを言葉にしてもらう日 だと考えています。言葉にできた揺れは、辞める理由ではなく、次の一歩のヒントに変わります。
自分自身に投げかけたい3つの問い
まずは経営者・管理者である自分自身に向けて。私が毎年この日、手帳に書き出している3つの問いです。
① 「今年度ここまでで、いちばん心が動いた瞬間はどこだったか」
業務の達成や数字ではなく、心が動いた瞬間 に焦点を当てます。利用者さまの一言、職員の成長、家族からの言葉 ― なんでも構いません。
ここに書ける出来事が複数浮かぶなら、その方向性は今の自分のキャリアと合っています。逆に、なかなか浮かばないときは、業務に追われて「自分の仕事の意味」を感じる回路がつまり気味だというサインです。
② 「あと3年、今のままで力を発揮し続けられるか」
キャリアコンサルタントとしてよく使う問いです。「辞めたいか・続けたいか」ではなく、「今のやり方のまま、3年走り切れるか」 と聞きます。
この問いに「YES」と即答できるなら、現在地は安定しています。「微妙」「分からない」なら、業務量・役割・学びのいずれかをチューニングする時期です。介護経営は、走り続けることそのものが価値ですが、走り方を変えずに10年走れる人はそういません。
③ 「来年の今頃、自分は誰の役に立っていたいか」
未来から逆算する問いです。「何をしているか」ではなく 「誰の役に立っているか」 で考えると、職種や肩書を超えてやりたいことが見えてきます。
私の場合、毎年この問いに答えると「現場の若手」「外国人材」「地域の事業者仲間」「学生」のどこかに重心がぶれます。今年はどこに重心を置くのか ― その判断が、年度後半の意思決定の軸になります。
職員に投げかけたい3つの問い ― 1on1の時間がある人へ
今日明日で1on1や面談の予定がある方は、最初の数分でぜひ次の3つを使ってみてください。評価面談ではなく、キャリア面談 としての問いです。
① 「連休のあいだ、仕事のことをどれくらい忘れられましたか」
これは健康・モチベーション双方のセンサーになります。
- まったく忘れられた → リフレッシュできている。よいサイン
- 半分くらい忘れられた → 自然な状態
- ほとんど忘れられなかった → 業務量・人間関係・責任の重さに、何らかの引っかかりがある
ここで無理にポジティブな返答を引き出さないことが大事です。「忘れられなかった」と言ってくれた職員には、それを話してくれたことに感謝を伝える ところから始めます。
② 「最近、現場で『これは自分の強みだな』と感じた場面はありますか」
弱みではなく強みから入ります。本人が自覚している強みと、上司が見ている強みは、ズレていることが多いものです。本人の言葉が出てきたら、こちらが見えている強みも添えます。「私はあなたのこういう面を頼りにしている」と言葉で渡すと、それだけで職員の表情が変わる場面に何度も立ち会ってきました。
③ 「これから半年で、誰と・どんな仕事を・どれくらいやりたいですか」
抽象的な「キャリアプラン」ではなく、「誰と」「どんな仕事を」「どれくらい」 という3点で具体に落とすのがコツです。
- 誰と:尊敬する先輩、特定のチーム、特定の利用者さま
- どんな仕事を:記録、面談、新人教育、外部発信、研修参加 など
- どれくらい:頻度・時間・責任の重さ
ここで出てきた言葉は、シフト編成・委員会設計・研修計画にそのまま反映できます。キャリア面談を「聞いて終わり」にせず、翌週からの業務設計に折り込む ことで、職員は「ちゃんと聞いてもらえた」と実感します。
キャリアの主語は「法人」ではなく「個人」
最後にひとつだけ。介護業界に長くいると、ついキャリアを「法人にとっての人材計画」として語ってしまいがちです。けれども、職員一人ひとりにとってのキャリアは、法人の戦略の一部ではなく、その人の人生そのもの です。
経営者・管理者の役割は、法人と個人のキャリアの重なりを最大化することです。重ならない部分があれば、無理に重ねず、卒業を支援することも含めてキャリア支援だと考えています。送り出した人が外の現場で活躍してくれることは、地域全体の介護力を底上げします。
終わりに
連休明け初日は、業務再開のスイッチを入れるだけの日にしてしまうには、もったいない日です。職員と自分自身に対して、いつもより少しだけ深い問いを向けてみる ― それだけで、年度後半の働き方が変わります。
今日のうちにメモしておいた言葉が、半年後に効いてきます。手帳でもスマホのメモでもかまいません。「今日のこの感覚」を、未来の自分に届ける つもりで、3つの問いに答えてみてください。
今日も一日、無理のないペースで、よい仕事を。
木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師


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