はじめに — 人手不足を嘆く前に、視点を変えてみる
おはようございます。木下です。
介護業界は今、深刻な人手不足に直面しております。求人を出しても応募が集まらず、来月のシフト表を前にため息をつく管理者の方も多いのではないでしょうか。そのお気持ちは、私自身も同じ立場として、よくわかります。
しかし、嘆いているだけでは状況は変わりません。少し視点をずらしてみますと、地域には「働きたい気持ちはあるが、フルタイムは難しい」という方々が、実は数多くいらっしゃいます。子育て中のお母さま、定年後の方、副業を希望する会社員、介護離職してから復帰のきっかけを掴めずにいる元職員——いずれも地域の “潜在的な労働力” です。
問題は、こうした方々と事業所をどのように繋いでいくかです。そこで有効に機能するのが、スポットワークというサービスです。
スポットワークは「すきま時間バイト」にとどまらない
タイミー、メルカリハロ、シェアフルといったサービスは、スマートフォンから数時間単位で働ける仕組みです。「若年層の小遣い稼ぎ」というイメージを持たれがちですが、それは一面にすぎません。
介護現場で上手に活用している事業所では、すでに次のような使い方が広がっています。
- 入浴介助で人手の不足する午前のみ、3時間お願いする
- 行事の日に、配膳と見守りで4時間来ていただく
- 送迎ドライバーが急に休んだ際、その日の夕方だけピンポイントで補完する
ここで重要なのは、「介護福祉士でなければ担えない業務」と「無資格でも丁寧に説明すれば対応していただける業務」を、明確に切り分けることです。
この切り分けができていない事業所は少なくありません。すべてを有資格者に背負わせ、結果として現場をすり減らしてしまうのは本末転倒です。プロフェッショナルにしか担えない業務にプロを集中させる——これこそがマネジメントの本質ではないでしょうか。
キャリア支援の視点から
私はキャリアコンサルタントの資格も保有しております。その立場から申し上げると、スポットワークは働く側にとっても大きな意味を持ちます。「お試しキャリア」としての価値です。
「介護に興味はあるが、いきなり正職員として飛び込むには勇気が要る」——そう感じておられる方は、想像以上に多くいらっしゃいます。そのような方が一日来てくださる。職場の雰囲気を見て、利用者さまの様子を見て、職員の働き方を見て、ご自身に合うかを確かめる。事業所側もまた、その方の人柄を拝見する。双方がリスクを抱えずに “出会う” ことができる——これは非常に意義深い仕組みです。
ここで肝心なのは、事業所側の構え方です。「どうせ一日だけだから」と雑に扱う事業所と、「来てくださってありがとうございます。またお顔を見せてください」と一人の人として迎える事業所。その後どちらが選ばれるかは、考えるまでもありません。
実際、当法人の周辺でも、タイミーから来てくださった方が「ここで働きたい」と正職員になられるケースが、少しずつ生まれてきております。一日の出会いが、キャリアの入口へとつながっていくのです。
最後に — 管理者の皆さま、求職者の皆さまへ
管理者の皆さまへ。
これまでのやり方やプライドを捨ててくださいとは申し上げません。しかし「うちは伝統的に…」という構えのまま人手不足を抱え込み続けることは、もはや限界に近づいております。スポットワーカーを “雑用係” ではなく、“地域とつながる窓口” として迎え入れてみてはいかがでしょうか。受け入れマニュアルを一つ整え、最初の30分を丁寧に説明する。それだけで、現場の景色は確かに変わってまいります。
求職者の皆さまへ。特に「介護に興味はあるが少し不安」と感じておられる方へ。
いきなり履歴書を送る必要はございません。タイミーで一日、現場をご覧になりに来てください。合わないと感じられればそれで構いませんし、合うと思われたら、ぜひお声がけいただければと思います。介護の仕事は、想像されているよりも面白く、人間味にあふれ、そしてしっかりと感謝される仕事です。
地域には、まだ眠ったままの力が確かに存在しております。それを呼び起こすのは、特別な制度でも派手な広告でもなく、一日働きに来てくださった方に「ありがとうございました」と心から伝えられる、現場の力です。
人手不足を嘆く前に、まずはそこから始めてみませんか。
本日も、よい一日となりますように。
木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師


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