新年度を迎える介護現場へ──AIは「もう一人の相棒」になれるか

新年度を迎える介護現場へ──AIは「もう一人の相棒」になれるか

こんにちは、木下浩志です。

いよいよ明後日から2026年度が始まります。新しい年度を前に、事業計画の最終確認や新入職員の受け入れ準備に追われている方も多いのではないでしょうか。

今日は、私が日々の業務で実践している「介護現場でのAI活用」について、新年度のスタートにふさわしいテーマでお話ししたいと思います。

「AIなんて、うちの現場には関係ない」──本当にそうでしょうか

介護の現場でAIの話をすると、まず返ってくるのがこの言葉です。

気持ちはよくわかります。私自身、最初は半信半疑でした。介護は人と人との関わりが核にある仕事です。機械やテクノロジーが入り込む余地なんてあるのかと。

しかし、実際に使い始めてみて、考えが大きく変わりました。

AIは介護そのものを代替するものではありません。介護に携わる「人」を支えるための道具です。

記録の作成、会議資料の準備、研修計画の立案、家族への説明文書の作成──こうした「介護の周辺業務」に費やしている時間は、想像以上に多いのです。その時間をAIの力で圧縮できれば、職員はもっと利用者と向き合う時間を持てるようになります。

新年度に試してほしい、3つのAI活用法

私が実際に現場で活用し、効果を実感している方法を3つご紹介します。

1. 会議録・議事録の下書き作成

新年度は会議が増える時期です。サービス担当者会議、運営会議、事業計画の説明会──どれも記録を残す必要がありますが、この作業が職員の大きな負担になっています。

私は会議の要点をメモしておき、AIに「この要点をもとに議事録の下書きを作って」と依頼しています。もちろんそのまま使うわけではありません。AIが作った下書きに、自分の目で確認・修正を加えて完成させます。

ゼロから書くのと、下書きを修正するのでは、かかる時間がまったく違います。体感では、議事録作成の時間が半分以下になりました。

2. 研修資料・教育コンテンツの構成づくり

新年度は新入職員研修やスキルアップ研修の時期でもあります。「認知症ケアの基本」「接遇マナー」「記録の書き方」──毎年同じようなテーマでも、時代に合わせてアップデートが必要です。

AIに「介護職員向けの認知症ケア研修の構成案を考えて」と投げかけると、見出し構成や説明のポイントを提案してくれます。そこに自分の現場経験や具体的なエピソードを加えることで、血の通った研修資料が短時間で完成します。

養成校で教壇に立つ身として強調したいのは、AIが作るのは「骨組み」であり、そこに「魂」を入れるのは私たち人間の仕事だということです。

3. 家族向け説明文書やお知らせの作成

「サービス内容の変更のお知らせ」「新年度のご挨拶」「行事予定のご案内」──こうした文書の作成も、AIが大きな力を発揮する場面です。

特に、ご家族向けの文書は丁寧な言葉遣いが求められます。AIに下書きを依頼する際に「ご高齢の家族にも読みやすい、やさしい言葉で」と指示すれば、適切なトーンの文章を提案してくれます。

新年度の挨拶状などは、AIの下書きをベースにすることで、本来伝えたい「想い」の部分に集中して時間を使えるようになりました。

大切なのは「使いこなす」ではなく「一緒に働く」という感覚

AIを活用するうえで、私が最も大切にしていることがあります。

それは、AIを「道具として使いこなす」のではなく、「もう一人の相棒として一緒に働く」という感覚を持つことです。

相棒だから、得意なことは任せる。でも、最終判断は自分がする。相棒が出してきたアイデアをそのまま使うのではなく、自分の経験と知識で磨き上げる。

この姿勢があれば、AIは介護現場にとって心強い味方になります。

「テクノロジーは人を置き換えない。人がより人らしく働くための道具だ」

私はこの信念を持って、AIの活用を続けています。

介護の仕事の本質は、目の前の方の暮らしを支えることです。その本質に集中するために、任せられる部分はテクノロジーに任せる。これは決して「手抜き」ではありません。むしろ、プロフェッショナルとしての時間の使い方だと考えています。

新年度、何か一つでもAIを試してみてください。最初は小さなことで構いません。「お知らせ文の下書きを作ってみる」──それだけでも、きっと新しい可能性を感じていただけるはずです。

介護の現場で奮闘するすべての方にとって、2026年度が実りある一年になることを心から願っています。

木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です