3月は卒業のシーズンです。北海道介護福祉学校でも、今年もまた新しい介護福祉士の卵たちが巣立っていきます。
講師として学生たちを送り出すたびに、嬉しさと同時に「現場でうまくやっていけるだろうか」という気持ちが湧いてきます。授業で伝えられることには限りがあります。しかし、現場に出る前に知っておいてほしいことがあります。
今回は、介護の現場で10年以上働き、経営にも携わってきた立場から、これから現場に出る卒業生に伝えたい「3つのこと」をお話しします。
1.「わからない」と言える勇気を持つ
新人のうちは、わからないことだらけです。それは当たり前のことです。
しかし、「先輩に聞いたら迷惑かもしれない」「こんなことも知らないのかと思われたくない」という気持ちから、わからないまま業務を進めてしまう新人が少なくありません。
介護の現場では、わからないまま行動することが最も危険です。利用者の安全に直結するからです。
「わからない」と正直に言えること。これは弱さではなく、専門職としての誠実さです。むしろ、わからないことを放置する方がよほど問題です。
現場の先輩たちも、最初はみんな新人でした。聞かれて嫌な顔をする人は、実はほとんどいません。大切なのは、同じことを何度も聞かないように、聞いたことをメモに残す習慣をつけることです。
2. 利用者の「生活」を見る
養成校では、介護技術や医学的知識をたくさん学びます。それらはもちろん大切です。しかし、現場に出ると気づくことがあります。
介護は「技術」だけではないということです。
私たちが支えているのは、利用者一人ひとりの「生活」です。その方がどんな人生を歩んできたのか。何を大切にしているのか。どんな暮らしをしたいと思っているのか。
食事介助ひとつとっても、「安全に食べていただく」だけでなく、「その方にとって食事がどんな意味を持つのか」を考えることで、ケアの質は大きく変わります。
技術は経験とともに上達します。しかし、「この方の生活を支えている」という視点は、意識しなければ身につきません。新人のうちから、この視点を持ってほしいと思います。
3. 自分自身を大切にする
介護の仕事は、誰かのために尽くす仕事です。それゆえに、自分のことを後回しにしてしまう人が多いのも事実です。
しかし、自分が心身ともに健康でなければ、良いケアはできません。
疲れたら休む。つらいときは誰かに話す。趣味や楽しみの時間を確保する。これらは「怠け」ではなく、専門職として長く働き続けるために必要なセルフケアです。
介護業界では、残念ながら離職率の高さが課題となっています。令和8年度の介護報酬改定でも処遇改善が大きなテーマとなっていますが、制度だけでなく、一人ひとりが自分を守る意識を持つことも重要です。
「利用者のために頑張りたい」という気持ちは素晴らしいものです。しかし、その気持ちを長く持ち続けるためにこそ、自分自身のケアを怠らないでください。
卒業生へのエール
介護の仕事は、決して楽な仕事ではありません。しかし、人の人生に寄り添い、「ありがとう」と言っていただける、かけがえのない仕事です。
養成校で学んだことは、皆さんの土台になります。そして、現場での経験が、その土台の上に専門性を積み上げていきます。
失敗することもあるでしょう。悩むこともあるでしょう。そんなときは、一人で抱え込まず、周りの人に頼ってください。
皆さんの活躍を、心から応援しています。
木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師


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