異例の「期中改定」が6月に迫っています
2026年6月、介護報酬の臨時改定が施行されます。
通常、介護報酬の改定は3年に1度。前回は2024年度でしたから、次は2027年度のはずでした。しかし今回、介護人材の確保が待ったなしの状況であることを受け、異例の「期中改定」が行われることになりました。
私自身、介護事業の経営管理に携わる立場として、この改定にどう備えるかを日々考えています。今日は、事業所の経営者や管理者の方に向けて、今から準備しておくべきポイントを3つに絞ってお伝えします。
背景にある「25万人不足」という現実
厚生労働省の推計では、2026年度に必要な介護人材は全国で約240万人。2022年度時点では約215万人ですから、年間約6万3,000人のペースで増やしていく必要があります。
しかし現実には、2023年に介護職員数が調査開始以降初めて減少に転じました。「人が来ない」「人が辞める」という声は、私の周りでも日常的に聞こえてきます。
こうした状況を受けて、国は2025年12月から補助金による賃上げ支援を開始し、2026年6月からはそれを介護報酬の処遇改善加算として制度に組み込む方針です。
準備すべきこと①:処遇改善加算の算定要件を確認する
今回の改定で注目すべきは、処遇改善加算の対象が拡大される点です。
従来は介護職員が中心でしたが、ケアマネジャーなど他の専門職にも対象が広がる見込みです。また、加算率の引き上げも検討されています。
ただし、加算を取得するには要件を満たす必要があります。キャリアパスの整備、職場環境の改善、賃金体系の明確化――これらは一朝一夕にはできません。
今やるべきこと:
- 現在取得している加算の区分と要件を改めて確認する
- キャリアパス制度が実態を伴っているか見直す
- 基本給・昇給・賞与の規定が明文化されているか確認する
特に小規模の事業所では、就業規則や賃金規程が実態と乖離しているケースも少なくありません。6月までの3か月で、書類と実態を一致させておくことが大切です。
準備すべきこと②:生産性向上の取り組みを始める
今回の改定では、生産性向上に取り組む事業所への上乗せ評価も検討されています。
具体的には、以下のような取り組みが評価対象になる見込みです。
- ケアプランデータ連携システムへの加入
- 生産性向上推進体制加算の取得
- ICT・介護ロボットの活用
「うちは小さい事業所だから関係ない」と思われる方もいるかもしれません。しかし、人手が限られているからこそ、一人ひとりの業務負担を減らす工夫が必要です。
大がかりなシステム導入でなくても構いません。たとえば、記録業務のタブレット化、情報共有ツールの導入、業務の棚卸しと無駄の削減。できることから着手することが重要です。
私自身も、日々の業務でChatGPTやClaudeといったAIツールを活用しています。議事録の整理、報告書の下書き、シフト作成の補助など、これまで時間がかかっていた作業が格段に効率化されました。こうした小さな積み重ねが、職員の負担軽減につながります。
準備すべきこと③:「処遇改善」を採用と定着の武器にする
処遇改善加算による賃上げは、既存の職員の定着だけでなく、新たな人材の確保にもつながります。
ただし、「給料が上がります」だけでは不十分です。大切なのは、なぜ処遇を改善するのか、事業所としてどんな人材を求め、どう育てていくのかを明確に伝えることです。
介護職員の離職理由で最も多いのは「職場の人間関係」で、全体の約25%を占めます。賃金は大事ですが、それだけでは人は定着しません。
今やるべきこと:
- 処遇改善の内容を職員に丁寧に説明する機会を設ける
- 「何をすれば評価されるのか」を明確にする
- 管理者のマネジメント力を高める研修を検討する
特に3つ目は見落とされがちですが、現場のリーダーや管理者が職員一人ひとりと向き合えるかどうかが、定着率を大きく左右します。
「制度に振り回される」のではなく「制度を活かす」
介護報酬の改定があるたびに、書類作成や体制の見直しに追われる。多くの事業所がそう感じていると思います。
しかし、今回の臨時改定は、事業所の体制を整える良い機会でもあります。キャリアパスの見直し、ICT活用の推進、職員へのメッセージの発信。これらは本来、改定がなくてもやるべきことです。
制度に振り回されるのではなく、制度を活かして組織を強くする。そういう発想で準備を進めていきたいと、私自身も考えています。
6月までの約3か月、一緒に準備を進めていきましょう。具体的なご相談があれば、お気軽にお問い合わせください。
木下 浩志
NPO法人ちとせの介護医療連携の会 理事長
株式会社MCL 取締役
北海道介護福祉学校 非常勤講師


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